「なにが……したい……って………?」
「いいよ、なんでも」
一体アルシャインのこの自信はどこから来るのだろうと、いつも不思議に思う。
不思議といえば、先ほど一番知りたかったことで、明らかにされていないことがある。
「あなた、その……あの……」
「ん?なあに?」
「し……したの?えっと……」
「なにを?」
「えっと……さ、さっき……」
「さっき?」
チラつく吹き出しのバラ色。
「だから……その……!」
「………」

ゴン!

「なんで殴るの?」
「っるさいわね!察しなさいよ、馬鹿!」
せっかく彼女の頬に添えていた手を離し、頭のこぶを押さえる。チャンスが勿体無い。
「察しろって……なにを?わかんないよ、いってくれなきゃ!」
「だ、だからその、人工呼吸したの?って聞いてるのよ!」
「はぁ?」
「人工呼吸」
「あ〜〜〜〜〜〜……したよ。もちろん」
「し!た、の?」
「へぇ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜?やっぱりそれが気になってたんだ?」
勝ち誇ったような満面の笑み。アイリーンは何だか憎らしくなってもう1発殴り掛かった。だが、ひらりとかわすアルシャイン。
「逃げるんじゃないわよ!」
「や〜だ、痛いもん」
「待ちなさい!こら!」
「好きだよ、アイリーン」
「ちょ、は?え?」
「ん?何か言った?」
「な、今、なんか言った?」
「好きだよ?なんか言った?」
「だから、今なんて言ったのよ?」
「ん?」
「ん?」
アイリーンをひらりひらりと翻弄するアルシャイン。いつになく強気なのは、彼女が照れていることが分かっていたから。
さりげなく「好きだよ」と言っているのに、アイリーンは気付かない。

結局、せっかくの二人きりになれたのに、戯れて喧嘩をするだけで時間を潰してしまった二人であった。

「まったく、見てる方が歯痒いわい」
と、エアが呟いた。

END.

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