砂浜に駆けてくる小さな足音。しかし大きな声で
「みんな〜〜!アイリーンが無事に目を醒ましたよ〜〜!!」
と、伝令するはルルアンタ。一同の顔に安堵の表情が広がる。
ナッジは一際幸せそうだった。
よかった……と呟くも、女子のうちの数人は、少しだけ元気がなかった。……アルシャインに救助された彼女を、妬いているのだ。
「よかったね……」
「そうですね……」
口々に無事を安心しながらも、微妙な表情で頷きあう。

(仕方ないのは分かってるけど……見たくなかったな……)

そこへ、アイリーンの母がやってきた。
「おお、お母さん。如何でしたかな、アイリーンは?」
「ええ、元気ですよ。早速拳骨振り回してますよ、あの子ったら…」
「おほ!それは元気で何よりじゃ!!」
あっはっは、と笑いが起こったところで、アンギルダンが
「二人には悪いが、一足先に、乾杯といこうぞ!」
と呼び掛けると、イオンズが「若い二人は、そっとしておきましょう」と酒豪軍団に目配せをした。
皆それぞれ「かんぱ〜い」とグラスを掲げた。

「お、いいな〜、皆もう始まっちゃったよ」
窓の外から乾杯の声を聞き、アルシャインが呟いた。
「どーぞ。行けばいいじゃない」
「素直じゃないな〜アイリーンは」
窓から視線を持ってきて、にやりと笑うアルシャイン。何か言いたげだ。
「どういうことよ、それ」
「二人っきりだよぉ〜〜〜〜〜?うれしくないのぉ〜〜〜〜??」
「……!うあううぇあれて、な、な、な、なにが……!」
『二人きり』の言葉に、頬を見る見る紅潮させ、しどろもどろになるアイリーン。
また先ほどのバラ色の吹き出しが思考のさまたげをして、彼の顔を見ることが出来ずにいる。
「誰も邪魔しないのに、まだ強がってるの?」
「な……なん……何する気よ、あなた」
すると、アルシャインはアイリーンの頬に手を添え
「何がしたい?」
と聞いてきた。


- 13 -


[*前] | [次#]



戻る
「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -