「うわっ、とと!むずかしいな……」
相変わらず新しいことに関しては要領の悪いアルシャインが、イルカに乗るのに苦戦していると、アイリーンは「しょうがないわねぇ…」と彼の元へ近寄った。が…
「ボクが教えてあげるよ!いいかい?ほら、ココへこう掴まって、こう合図すれば進むんだよv」
なんと、エステルが積極的にアルシャインに手取り足取りイルカの乗り方を教えにきたではないか。
エステルの大きな胸が、柔らかな腰が、アルシャインに密着している。
「!!」
アイリーンは絶句し、そのままフワフワと海上を漂った。
(何故かしら…割り込む気に、なれなかった…)
彼女の心に、チクリと棘が刺さった。

若者達が海の生き物達と戯れていると、ナッジが急に青い顔をして沖の方を指差した。

「あ…あの形……もしかして、鮫じゃない?」

「シャーック!(シャークとショックを掛けたのか?)マジでヤバいぜ!皆逃げるんだ!!」
ヴァンの駄洒落に付き合う余裕などない。皆大慌てで岸に泳ぎだした。
「皆さん落ち着いてください!私が鮫をなだめますから!」
「無理だよ!いくらイークレムンでも、鮫が相手なら敵わないよ!!」
鮫とのコンタクトを試みるイークレムン、イルカや魚達も大慌てで逃げるなか、エステルは彼女の腕を引いて泳ぎ逃げた。

「あっ……つ!!」

すると、アイリーンが溺れてしまった。急に逃げようと方向転換したせいで、足がつってしまったのだ。

「アルシャイン!!アイリーンが溺れておるぞ!!」
と、エアの声が鋭く響いた。
「なん……!待ってろ、アイリーン!!」
アルシャインは溺れて意識を失いかけている彼女を担ぎ、大急ぎで岸へと泳ぎだした。

迫り繰る三角の背びれ。

大きな魚影。

三角のせびれが浮き上がった。

一同が、「もうお終いだ」と最悪の事態を覚悟した。

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