「玲先生ってさ、実は腹黒いでしょ?」



あたしがそう先生に訊くと、先生はぴくりと少し反応したがそのまま採点するペンを動かした。



「そうかい?」


「そう。紳士的に振舞ってるつもりだろうけど、そっけないよね。それに、冷たいし」


「君にそう言われるなんて、思ってもいなかったな」



返事はするけど、先生は採点する手を止めない。


って言うか、せっかくあたしが話してあげてるのに顔ぐらい上げなさいよ。



「話をするのはいいが、早くそのプリントを終わらせたらどうだい?」



ううっ、とあたしは声にならない声をあげる。


今、放課後の教室にはあたしと先生しかいない。

別にデキてるわけじゃないから。

あたしは圭くん一筋だから。


つーか、先生なんて眼中に……



「早く帰りたいだろう?」



ずっと採点していたプリントに向けていた目を先生はあたしに向けた。


う。
か、かっこいいのは確かだけど。


まあ、この台詞も『早くさっさとプリントしやがれ』ってことでしょ。裏を返せば。


あたしは可哀想なことに、数学の補習を受けている。

ユッコも補習かな、と思ったらギリギリで逃れてるし。


しかも、あたしだけだし。

しかも、担当が玲先生だし。


本当、最悪……。

放課後、圭くんにCD借りようと思ってたのに……。


そう思ったら本当悔しくて、プリントをてきとうに解いて先生に突き出した。


教卓に座って採点していた先生のペンが止まり、あたしが突き出したプリントをさっと見ると、またあたしに突き出した。



「全問不正解。残念だったね」



む、ムカつく……!


作り笑顔で答えた先生にムカつき、思わずあたしは先生を睨んだ。

けど、そんな睨みが先生に効くはずもなく……。


あたしは渋々席に着き、プリントとにらめっこを始める。



「やっぱり先生って腹黒いでしょ」


「君ほどじゃないな」



む、ムカつく。ちょっと、マジでムカついた。



「先生のほうがよっぽどだと思いますけど?」


「へえ、興味深いね。どこらへんが?」


「無駄に作り笑顔なんか浮かべてるし、冷たいし。先生の“玲”は“冷”なんじゃないの、本当は」



ならべく、笑顔が崩れないようにあたしは応戦した。


大体、あたしのことを『飯沼』って呼ぶのは玲先生だけなんだけど。

そこもムカつくんだけど。



「君だってそうだろう? 周りの人を最大限利用しようと考えてる」


「考えてないですけど。先生」



実は少し当たってはいるけど、そこはのんちゃんの笑顔で答えてやった。



「のんの心は愛で満ち溢れてるの。愛でいっぱいなの」


「そうかい。おめでたい子だね」



先生の言葉にムカつきながらもあたしは続ける。



「なのに、先生は冷たいよね。誰かを好きになったりできなさそう」



あたしは持ち前の演技力で、先生を哀れんだ目で見つめた。

もちろん、皮肉を込めて、ね。



……だけど、先生から返ってきた言葉は予想もしていなかった言葉で。



「そんなこと、ないよ……」



……その一瞬、先生の本当の笑顔が見えた気がして。


一瞬、愛しそうに微笑んで。


……え? なになに?

もしかしてそれって……





先生、質問!!

(先生の好きな人ってダレですか!)





「あはは、君に言うわけないじゃないですか」



その、あたしをバカにしたような先生のさっきとは比べ物にならない作り物の笑顔にあたしはとうとうキレた。



「じゃあ、一生かかっても探し出してやる! そんでその子に先生の嫌なところ吹き込んでやる!!」


「あはは。頑張ってください」


「ムッカー!!」






あみだくじでこのふたりがペアになった瞬間、ちょっと笑ったのは天樹です。
うわ、なにこの腹黒組。

このふたりはすごく似てると思うのは天樹だけですかね?
腹黒いあたりが(ここ重要)

しかも先生と生徒……このふたりの言い合いはまだまだ続きますよ。

玲は表向きのほうを使いました。
裏向きだったら、絶対この子は無言でのんちゃんをころs(強制省略)

ぐだぐだになってしまった感があるのですが、結局天樹がいいたいことは。

このふたりは似てる!\^^/


お題配布:ニーチェの鼻歌
ふろむ:さよならマリオネット





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