loop | ナノ




ツナくんたちめちゃくちゃ死にます。
死ネタが苦手な方はご注意ください。

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これは遠い遠い昔の話、なんて始まると堅苦しくて仰々しいかな。

でも本当に昔の話だ。



俺たちは、橋の下にいた。

二人とも帰る家なんて、守ってくれる親も、何もなくて、
本当に、比喩でも何でもなくて、自分を保つ為にはお互いが必要で

寒さを凌ぐために抱き合う温もりが何よりで

そんな俺たちを、大人は汚いものを見る目でみてた。


その中で、酷い暴力をされて、


目の前でキミが汚されていくのを、既に汚された俺はただ見てることしか出来なかった。
いやだやめてと叫びたくても潰された喉じゃ掠れた声も出せないで、

うまく動かない身体を、無理に動かした痛みで意識が途絶えた。


目が覚めれば、温かい腕の中、
ひたすらに泣く声を聴いてた。

自分だってボロボロなくせに、ごめんなまもれなかった、ごめんなって泣く声。


腕の中がひたすらに温かくて、

あぁ、死ぬなら今が良いな、なんて考えてた。


しばらくして、泣く声も消えて、抜けた腕の力。
支えてくれるものが無くなって、地面に落ちる俺の身体。




愛しい人の、命の、おわり





死んじゃった、しんじゃった、やまもと


なんで、おれたちがなにしたっていうの、なんでなんでどうして



ね、おれだってきみをまもれなかったよ
ごめんね、ごめんやまもと




その夜、再びやってきた大人の一人を殺して無理矢理叫んだ喉が裂けてでも痛みなんて感じなくてもう一人に地面に打ち付けられて踏み付けられて
血を流して血を吐いてでもやっぱり痛くなくてでも身体は上手く動かせなくてなんとか山本の隣に横たわって、俺は死んだ。



そうして、俺たちは、死んだ。


餓えて、傷付いて、

それでも、お互いずっと離れず寄り添って


それが始まりだったのかな、もう昔過ぎて忘れたよ





その次が、裕福な家


生まれ変わったんだって直ぐにわかった。
そして、これは前世で苦しんだ分の褒美なんだとも思った。


綺麗な服に、暖かい家、布団。
美味しいご飯はいくら食べても無くならない。



なのに、キミは、俺の傍にはいなかった。


だから探したんだ。持てるすべての力を使って。
父も母も優しかったから、何も訊かずに手を貸してくれた。

毎日毎日、部屋の窓から街を眺め、キミが見つかるのはまだかまだかと待ちわびた。


でも何日、何ヶ月、何年経っても見つからない。

使用人に当たり散らして、だからと言ってキミが見つかる訳もなく、毎日毎日毎日。

そうしたらある日、その使用人が言ったんだ。


「…ツナは変わっちまったんだな」



その一言で、キミがキミだと気付いて、

でも、毎日毎日、キミに当たり散らしてた俺は、キミに酷いことをし慣れてしまっていて、

しかもキミは使用人で、


このときの俺は本当に馬鹿だったよ。


まさか俺が、この手で、キミを殺してしまうなんて。


裏切られた気がしたんだ。
一生懸命探してる姿を、キミは一番近くで見ていたのに、キミはずっと黙っていて。

なんて、実際に俺は父と母の力を借りていただけで、なにもしていないのにね。



キミを殺して、直ぐに正気に戻った俺は、直ぐに自殺した。


そうして、俺たちは死んだ。

欲に溺れて、過ちに気付いたときにはもう遅くて、


これが一番酷い人生だったかな。
ていうか、殺してごめん。ほんとごめん。




その次が俺が吸血鬼で、キミは人間だったかな。


俺は山本の血しか飲めない身体で、どうして、こんなにも幸せになれないんだって嘆いたな。
だって、また俺は、ひどいことをしなくちゃいけないんだって、そう思ったから。

キミを傷つけるのが嫌で離れようとしたんだけど、

でも、キミは俺を受け入れてくれて、

…俺のことなんて、覚えてないのにね。

それが少し寂しかったけど、


あぁ、幸せって、こういうことなのかなって、


それから、キミはどんどん歳を取って、
しわくちゃのおじいさんになって、

俺はそのとき見た目25歳くらいだったかな。

時間の流れが違い過ぎて、キミはあっという間に死んでしまった。
キミは最期にありがとうって、あったかい布団のなかで、俺の手を握って死んだんだ。

不思議と、穏やかな別れだったね。

それから、何年かして、俺も死んだ。

当たり前だよ、キミの血しか飲めない身体だったんだから。

キミのお墓に寄り添って、雪が降ってたから、あれは少し寒かったなぁ。



そうして、俺たちは死んだ。

でも、幸せだったよ。
ありがとう、やまもと。


それから、

四度目は、キミの自殺を止められなくて、

五度目は、なんかちょっとやらしい店で働いてて、二人とも病気で、

六度目は、…あれはすごかった。生まれる前に、会えたんだよ。

七度目は、八度目は、

これまで何回もキミの最期を見届けてきたんだ。

なかには、普通の、ごく普通の一生だったときもあった。


毎回波乱万丈じゃ、たまったもんじゃないよね。











「それで、」


「  つ、な」
「俺たちは また死ぬんだ」
「 やだ、しぬな つな」
「…ははっ、…自分も、死にそうで  何言ってるんだよ、」
「 つ なっ」
「やまもとが死ぬなら、いっしょだよ」
「… つなあ」
「独りにしないで、 やまもと」


ここは、イタリア

マフィアのボスになった俺は、守護者であるみんなを連れて、なんとかうまくやっていたのに、

ちょっとしたいざこざから始まった抗争が、今やこの組織を壊滅の危機へと追い込む事態になってしまった。


なんとか、収拾をつけたけど、

俺は、へまをして、片足と、片目を失った。

いや、もしかしたら眼球は無事なのかもしれないけれど、血でみえないし、同じことだろう。


そんな俺を抱える山本は、身体中のあちこち、そして、背中に大きな傷を負っている。


すぐ来るといわれた救護班は、なかなか来ない。
きっと、事が収まる前に殺された。
こんなヤツの下についたばっかりに、ごめん。



「やま もと」

あぁ、両腕が無事でよかった。
片目が、無事でよかった。

これだけあれば、


抱きしめられる


笑顔を、見られる




「あいしてるよ、」


この時代で、山本と、また出会えて、

ほんとうによかった、








「思い出したんだ、ツナとの思い出、全部」

「 、え?」


ぽつりと、山本が、こぼした




「  な 、んで」
「今までごめんな、思い出せなくて」


いいんだ、そんなの、

俺は首を振った


今までに、ありえないことが起きて、

血の足りない頭では処理しきれない。


山本が、今まで、なんども繰り返されたことを、

思い出した、?


「でもな、」


「ツナ、いっこだけ忘れてる。オレたちの一番最初は、中学生んとき、
ツナがマフィアのボスになるならないって言っててな。オレも仲間だったんだ」
「  え、」
「オレには夢がいっぱいあったけど、でも、ツナがマフィアのボスになるって言ったとき、全部捨ててツナについってったんだ。
ツナのこと、すげー好きだったから」
「 、…ふふ」
「それが、一番最初」


そのあと、俺が先に死んで、

山本も後を追おうとしたらしい。ばか。

でも、俺がそばにいる気がして、思いとどまって、自殺はしなかった。


「…マフィアなんて、 今といっしょだね」
「んや、そんときは、オレたち付き合ってなかったから」
「…、」
「今とは、大違い」
「… やま」

そこまで話すと、ついに山本の身体が倒れた。

どさりと、俺も、そのとなりに。



もしかしたら、これで最後なのかもしれない。

なんども、キミに、


山本に出会えた、これの。



「愛してるぜ、ツナ、ずっと、最初から」
「…ふ、 やま とぉ、っ」
「ツナ」
「しにたくないよ、やまもと、あいしてるずっとずっと」



そうして、俺たちは、死んだ。












夢をみた。
実際にあったことなのだから、夢、と言うのかは曖昧なのだけど。

涙でぼやける天井は、いつもの俺の部屋。

ぽろぽろと崩れていく夢の内容を、ひとつひとつつなぎ合わせて、

どうしようもなく切なく、愛しく、悲しく、幸せになって、


一緒にベッドに入った、大きな身体を、ぎゅうと抱きしめた。


そうするとやっぱり起こしちゃうんだけど、やさしい温もり。

大好きな、

「……   やまもと、」
「  つな、?  どうした?」
「…んーん。   なんでもない」
「こわいゆめ?」

「ちがうよ。… たいせつな、ゆめ」

「… そっか」
「起こしてごめんね、明日、試合なのに」
「んや、へーきへーき」
「…  ん、 おやすみ」




大好きな、愛しい人の、ぬくもり。


「  おやすみ」


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ずっと長いあいだ放置していたものです。
二人には幸せになってほしいなぁと思ってます。

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