ボロボロ泣いてる

俺も山本も、


「つな、…  つな、」


ひたすら俺の名前を呼ぶ声が、優しくて懐かしくて、


あたたかくて



あんなに望んだ声が、やっと帰ってきた



今、ここに



こんな近くに







あるのに、



「…どうなんだ」
「うん。もう平気。」
「………。」
「イタリア、行くよ。心配かけてごめん。」



…ある、のに



「…ね、…  やまもと」
「…、ん?」



ねぇ、山本、


「…つな、?」


どうして、



山本の声が出るようになったら、

俺は日本を出るよ。








どうして俺たち離れなきゃならないの、?





山本、ごめんなさい







「…おれ、 っ…おれと、 おれと一緒に…  きて、 っ、ください…っ!」



やだ、やだよ


離れたくない





全部、大丈夫になったらつなのことおっかけるから、て。
そうつなに伝えたら、つなはやわらかく笑って、うん、て。言ってくれた。



強がってごめんなさい
嘘付いてごめんなさい

嘘を付き通せなくて

ごめんなさい



「やま 、やまもとがいなくちゃ、 おれ、」



山本が、イタリア行きを断るのはわかってた。
野球もおじさんの事も山本の人生だ。
山本が決めるのは当たり前の事で、そこは俺が口出しして良いことじゃない。

だから、俺はうん、って言った。

山本に迷惑かけたくなくて、



でも、

それから凄く怖くなって



だって、山本が、いなくなるんだ

いないんだ


向こうに行ったら、山本が



ねぇ、どれだけ待てば来てくれるの?



山本から「行かない」って言われてから、決定的な言葉を聞いてから、



全てが怖くなって


…山本すら、怖くなって



「ごめ、 ねっ、困らせるの、わかってるんだけど、  」
「…ツナ」



こんな我儘、山本に言っちゃ、ダメなのに、





「… 、離れたく ないよ、ぉっ!」
「─────っ!」



身体中がズキズキ痛むのなんて関係無い。



山本、お願いだ


今だけは、ありったけの力で抱き締めてよ













「…行く」
「え?」
「ツナと一緒に、行く」


山本が口を開いて、そこから零れた言葉
オレを抱き締めたまま呟いた言葉は、

確かに俺が望んだもので、

それでも、それを聴いた瞬間に我に返った。

何を言ってるんだ俺は。


山本、に迷惑はかけちゃダメって

口出しして良いことじゃないって

あれほど、


ごめん、山本
困らせて、ごめん

山本が来てくれるの信じてるよ

俺、ちゃんと待てるよ


だから、来てくれたときにたくさん抱き締めて?




「だ、だめ」
「何で?」
「ごめ、違うんだ、」
「オレ行っちゃだめ?」
「ちが…」
「ん?」
「おれ、待てるから…」
「ツナ」


あぁ、どうしよう

あんなこと言ったら、山本がそう返すのなんかわかってたのに、


ズルい、ことをした
だからダメツナなんだ


どうしよう、どうしようどうしよう


「つーな」
「え、  んっ」


いつの間にか罪悪感で涙を流していた俺に、山本は口付けた。

びっくりして瞬きを繰り返してると、目の前には山本の優しい笑顔。

やめて、そんな顔しないで

お願いだから




「オレも、ツナが一緒じゃなきゃダメだ」
「…でも、」

強がってごめんなさい

「ツナに言われたからじゃなくて、オレが決めた」
「…… やま、 もとっ」

嘘付いてごめんなさい

「大好き、つな」
「  っ、!」



嘘を付き通せなくて

ごめんなさい



「な、オレも一緒に連れてって?」
「……、 はい…!」



ね、涙なんか掬ってないで

そんなの流しとけば良いんだ


だから、

お願い



君の手は、優しい手は

この手を二度と離さないで




君の声が再び届くまで、なんて待てなかった、

弱い俺をどうか許して




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本編はこれにて終わりですっ!
長い間ありがとうございました!

一応、その後的なものを書く予定です。




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