「 、」
「山本、お疲れさま。」
陽も沈んだころ。
俺は校門の前でやまもとを待っていた。
しばらくして野球部の人たちが見えてきて、その中に山本を見つける(俺以外の声は聞こえるらしいから、山本はスゴく楽しそうだった)(ちょっと、胸が痛んだ)
そして山本も俺を見つけるととても驚いた顔をして。部活の友だちたちに別れを告げて俺のそばまで走って来た。
「 、 …、」
少し口を動かしたところで、はっとして口を押さえる。
そうしてカバンからノートを取り出して
『ツナ、どうしたんだ?』
待ってるなんて、驚いた。と、そう走書きして俺に見せた。(走書きした山本の字はちょっと読みづらかったけど)
『ごめん』
山本のノートとペンを借りて、俺も文字を書く。(俺の字もすごく読みづらかった。)(もとから汚い字が、もっと汚くなって)
それを山本に見せると、山本は歩いていた足を止めて、じ、としばらくそれを見つめて(どうしたんだろう)(汚すぎて読めないのかな。)
『オレも悪いから。』
ようやくペンをとった山本に、そう書かれて、俺は首をめいっぱい横に振った。
違うよ山本。山本は悪くないよ。
こんなことになったのは、俺があんなこと言ったからだ。
ねえ山本、
「山本の声が、ききたいよ、」
俺のだいすきな声で、俺の名前を呼んでよ。
ツナ、て呼んでよ。
思わず紙に書くのも忘れてそう呟いた。
そう言ったあとで、聞こえないんだと思い出して、紙に書こうとする。
それを、山本に止められた。
「山本?」
「 。」
相変わらず山本の声は聞こえなかったけれど、山本はすごく嬉しそうな顔をしていた。(抱きしめられる直前に、見えたんだ。)(なんか、ちょっと泣きそうな。)
「どうしたの?ねえ、やまもと」
「 。」
「え、何?聞こえない、」
だいぶ力を入れていた腕をようやく離して、山本と俺は向かいあった。
ねえどうしたの山本、
なんで、そんな、うれしそうな、
「聞こえる。」
ゆっくりと口を動かしてくれたから、声が聞こえなくても山本が言いたい事はわかった。
それより、何より、俺が少し期待していた言葉だったから。
恐る恐る口を開く。
だって、山本、
「聞こえ、るの?山本、」
山本は確かに大きく頷いた。
あぁでも山本。
俺は君の声が聴きたいんだってば。
なんて、我が侭だね。
俺が悪いのに。
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ツナ/ツナ、どうし…/つな/聞こえる