「声出してみろ。」
「 ーー。」


おいおいマジかよ。と山本を一通り調べたシャマルはどかっとイスに座った。

山本の声が出なくなって、俺の声だけ聞こえなくなって、
声を出そうとしても口がぱくぱく動くだけ。
それでも、山本自身は声が出ていないことについさっきまで気づいていなかった。


廊下で、山本に呼ばれた気がしたんだ。
あれ?と思って振り返ればほんとに山本がそこにいて、
朝で頭がぼーっとしてたから、だから山本の声を聞き逃したんだと思ったんだ。(そんなこと、あるわけないのに)(だって。山本の声だ)(山本が、俺をツナ、って呼ぶ声)(聞き逃すわけないのに)

でもだって、誰が、
誰が声が出なくなったなんて想像できる?


「お手上げだな。声が出なくなって、一人の声だけ聞こえなくなる病気なんてきいたことねえ。」


シャマルがこう言うんだ。きっと普通の病院になんか連れてっても意味なんかないんだろう。


もうどうして良いかわかんなくなったとき、時計をちらちらと気にしていた山本は、部活があるからと保健室を出ていった。(声は適当に理由つけるから、と筆談して。)

今日くらい休めとリボーンに言われてたけど、少し悲しそうな顔をして、首を横に振った。



「なんで、こんなことに、」


本人がいなくなった保健室で獄寺くんは小さくつぶやいた。

違うんだよ獄寺くん。
こうなってしまった原因なんて、ひとつしか浮かばないんだ。



「…俺が、『黙ってろ』なんて言ったから…、」
「そんな!そんなことでっ」
「いや、そうだろうな。」


かばってくれた獄寺くんの言葉をリボーンは横から切った。


「山本は、どんなことにもへこたれねーヤツだが、」


ツナの事だけは、すげー敏感だっただろう。

俺に黙ってろと言われて声が出なくなった。
でもそんなことをもう言われたくないから俺の声だけ遮断して


「ツナは山本の唯一の弱点だからな。」



「黙ってろ!」


あのとき、はじめてだったんだ。
山本を拒絶したのは。

だから、まさかこんなことになるなんて、



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