「炎真くん、すごく人に絡まれやすいんだって」
「へぇー、まぁあんなナリで弱そうっすもんね」
「そ、うかな…はは…んでね、獄寺くん」
「はいっ!なんでしょう!」

「もし、炎真くんが絡まれちゃってたら、助けてあげて欲しいんだ」



そうご命令されたから、だ。


「…大丈夫かよ、」
「…はい、」


キッカケは。



*気付いた気付いて*



体育館裏、なんてベタなところ
肉と肉がぶつかる鈍い音と小さなうめき声。
めんどくせえと思いながらも聞かなかったフリなんて出来ずに足を向かわせると、不良どもの足元に転がるのはあのハデな頭をした転校生だった。


(やっぱりマジ弱ぇ…)


なんの抵抗もなくただやられるだけ。
ときおり苦しそうな声が漏れて


もうこの光景も何度目だろうか。
助けても助けても不良どもに絡まれる。
最近はコイツに絡むと俺が出てくる、なんて噂が広まったからか少なくはなっているらしいが、すぐに他の新しい不良に絡まれていたり。


「…おい」
「あぁ!?……ひぃ!」
「やべぇ獄寺だぜコイツ!」


ヒーとかワーとか叫びながら逃げていきやがった。
そうだ。睨みこんでやればそれで終わりだっつーのに


(まぁコイツには無理か)



地面に座ったままだった転校生に手を差し出す。

しかし転校生は俺の手を見たままでなかなか掴もうとはしない。
…まぁ、なんとなく理由はわかるんだが。


「別に殴らねーよ」


俺だって見たまんまの不良ってヤツだ。
怖がるのはしょうがねぇことだってのはわかる。
…にしてもこれだけ助けてやってんだ。
もう良くねぇか?


行き場のなくなった手を、丁度良い位置にあった転校生の頭にもっていった。
ワシャワシャと頭を撫でている間も肩をすぼめて怯えている。

くそ、なんだか俺がいじめてるみたいじゃねぇか。


助けてるっつーのに怖がられるのはなかなかムカつくもんなんだよ。


(なんて、)


その苛立ちも、理由はそれだけじゃねぇってのはわかってんだ。


(くそ、)


「!」

転校生の隣にしゃがんだ。
また驚かれて少し距離があいたけど、
視線もあわさず何もしないで、(呼吸にすら気をつかって)(静かに、静かにしていると、)


「………。」
「…。」


もとの位置に戻ってくる。

近いところに俺がしゃがんだから、もとの位置に戻れば当たり前に俺の腕と転校生の肩が触れ合う。

他人の事を言えたもんじゃねぇが、コイツもなかなか体温が低い。
触れ合ったところから地味に体温が伝わってきて、なぜだか安心する(あぁコイツも生きてんのか、とか)(まるで死んだような目してやがるから、)(まさか自爆霊なんじゃねぇかとか)(…もう思ってねぇけど)


こっちから下手な事をしなければ、距離は縮まる、という事に最近気付いた。


「……なぁ」
「!、…はい」
「何でずっと座ってんだよ」
「え、あっ、と…」
「立てねぇのかよ?」
「いや、…大丈夫…」


小さい声で話かければ返事がまともに返ってくることにも気付いた。


「大丈夫、だけど」
「…あ?」


あと気付いたのは、


「もう少し、このまま、」



コイツも俺の事、好きなんじゃねぇかって、



「炎真」

「…うん?」
「…今度から絡まれたらケータイ鳴らせ」
「………。」

「すぐ、行ってやるから」
「…頑張る」



ゆっくりと手を握っても握り返してはこない。

そのかわり、

腕への重みが、少し増した。



俺はどこまで気付かれてんだか。

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ってわけで獄えん!
恩を仇で返すからイライラしてるってだけじゃなくて他の不良と同じ目で見られてることにちょっと傷ついてるんだよ!
それをイライラでちょっとごまかしてるよ!

スゴく2人とも積極的なんだけど付き合ってんのかな…付き合ってないんだろな…。




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