何をされるかと思ったんだ。
肩を捕まれて、あぁもう逃げられない、もう殴るでも蹴るでも好きにすればいい。
そう思ったんだ。
なのに、彼は僕には何もせずに、ただファミリーのみんなを集めろ、とそれだけ。
それだけ。
(不良、なのに)
(殴らないんだ…、)
(……変なの)
*贅沢者
しばらく遠巻きに見ていて、あの人は本当に変な人なんだと気付いた。
シット・ピーの事を本気で地低人とかと勘違いしてたり、不良なのに頭良かったり、授業中なにか一生懸命やってるかと思えば変な暗号考えてたり(それをツナ君に自慢してた)(自慢ってより、報告っぽい)(シット・ピーの事も報告してた)
とりあえず、変な人、なんだ(ツナ君の側にいると近づいてくるから、近づいてきたら逃げた)(ツナ君が止めてくれてたから追ってはこない)
「転校生じゃねぇか」
「!」
「っ、だからなんで逃げんだよ!」
偶然、外でばったり会っちゃって、また逃げた。
だって今まで不良にはこうしてきたんだし、
近くで見るとやっぱり怖い。
自然と足が動くのは仕方のない事だ。
「待てコラァ!」
「っ!?」
今日は止めてくれるツナ君がいないから追いかけて来る声と足音がする。
捕まったらやっぱり殴られるのかな。
誰だってそうだけど、痛いのは嫌だ。
僕は少し慣れたけど、やっぱり痛いのは嫌だ。
「待て、つってんだよっ!」
「、わ、!」
しつこく追いかけられて、ついにパーカーのフードを掴まれて後ろに引かれた。
首がしまったけどすぐにフードを離されたから痛くはない(それと、やっぱり殴らない)(不良なのに)(この人は、 )
振り返って見ると、彼はゼェゼェいって苦しそうだ。
何もそんな必死に追いかけなくったって良いのに( 、 )
なんで、
「なんで、オメー逃げんだよっ」
「…え、」
「顔見るたびに逃げられっと話できねぇだろうがっ」
なんで、
「…はなし…?」
ねぇ、
「あ?十代目のご様子が、とかあんだろうが!」
あぁ、
「お前も一応、警護の一員なの忘れてんじゃねぇだろうな!?」
そうか。
「…忘れてないよ、」
彼の為。
全部全部、(色んな報告も、)(暗号も、)
(僕を追いかけたのだって、)
彼の為なんだ。
「、おい?」
「…え?」
良いな、なんて思ってしまった。
彼を想うように僕の事も想ってくれたら、なんて、
「なに泣いてんだよ、」
「!」
そんなのバカみたいな話だ。
「っ、あ、おい!」
そこで逃げても彼は追いかけては来なかった。
「あの人、変だよね」
「獄寺くん?」
「うん」
「ははっ、うん。確かに変だね。」
ツナ君が笑う。
ツナ君はいい人だ。こんな僕と一緒にいて、他愛ない話でもたくさんしてくれる(だいたい僕が黙るから、話はツナ君から、なんだけど)
「でも、変だけど悪い人じゃないよ」
「……。」
「ちょっと怖いけどね。」
「、はは」
「ただ俺のこと、十代目十代目ってばっかりだから、」
「 、」
「友達としてみて欲しいかな、なんて」
「……。」
…あぁ、
「あ、ごめん!炎真くんに何言ってんだろうね!」
「…別に良いよ。」
君は贅沢者だ。
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そんなに想われているのに、
獄←えん!
とりあえず可愛いコは泣かせてみようの精神で!
炎真くんの一人称『僕』なのか…でも可愛いから何でもおっけ☆の精神で!