やまもとって俺がちょっと甘えて呼ぶと、他の誰にも見せない柔らかい笑顔で笑うから、
俺はそれを他の誰にも見せないように、2人きりのときだけ甘えた。
山本の首に腕を回して、ぐっと引き寄せると身長の高い山本は無理に背中を丸める。
辛そうだけど、言ってやらない。
みんなの人気者の柔らかい笑顔も、ちょっとしかめた顔も(だけど嬉しそうな顔も)俺だけの、俺だけのものなんだ。
「つな」
俺の真似をした、甘えた声が好き。
それも、俺だけのもの。
「つーな」
「なにー?」
何回も、何回でも呼んで。
大好きな、その声で。
「呼んだだけー」
「ははっ、うん。わかってる。」
大きくて、ちょっとゴツゴツした、あったかい手。
それに触るのが好きだった。
手を触ってる間、大人しく貸していてくれたり、
時々いじわるされたり(手をグーにされて、)(広げようにも握力で勝てるわけないから)
俺が拗ねると、慌てて謝ったり。
「つーな。ごめんって」
「しらない」
「つーな。つなー?」
山本が謝りながら頭を撫でる。
それも好きで、もう怒ってないのに怒ったふりをする。
多分、山本は俺が怒ってないのなんか気づいてるんだけど、それでも頭を撫でるから、俺はまたそこで山本に甘えるんだ。
「ね、山本、」
「んー?」
こんな、こんな俺を好きと言ってくれて、
「やっぱいーや」
ありがとう。