たくさんの人に「おめでとう」と言われ、
たくさんの人に「ありがとう」と返した。
すごく、すごく嬉しい。
真夜中。
もう日付がかわりそうなころ、
オレは今日貰ったたくさんのプレゼントを前にため息をひとつ。
いや、プレゼントがイヤなわけじゃなくて、勿論みんなに貰ったのはスゲー嬉しいんだけど、
(ツナ、学校休みだったな)
一番言って欲しかったひとに、おめでとう、と言ってもらえなくて。
ツナからプレゼントを貰いたいわけじゃない。
ただ、ツナからの「おめでとう」って
そのたった一言が、オレにとって一番のプレゼントになるのに。
(まぁ、風邪ならしょーがないのなー)
すごい残念だけど、今年は諦めるか
そう思ったときに、
「うを!びびった」
突然鳴り出したケータイ。
机の上に置いてあったから、バイブが机にあたって予想以上に大きな音が出た。
思わず言ってしまった独り言に、誰もいないのに恥ずかしく思いながら、未だにバイブを続けるケータイを確認する。
するとそれは、着信を知らせていた。
しかも、
ツナからの。
「──も、しもし?」
『あ、やまもと?』
少しかすれた、ツナの声。
きっと風邪で喉をやられたんだろう。
それより、なんでツナから電話?
夜遅くにごめんね、と続けるツナの声に時計を見れば、あとほんの十数秒で12時になるところだった。
どうしたんだ?と訊く暇もなくツナは続ける。
12時まで、あと、
『あのね、やまもと』
「ん?」
『誕生日、おめでとう』
丁度言い終わったところで、日付がかわった。
『ホントは、朝迎えに行って、一番に言いたかったんだけど、』
「つ、な」
『ごめんね。俺、風邪ひいちゃって。』
学校終わったくらいに電話しようと思ったんだけど、
山本、何処で何してるかわかんないから、
他の人の「おめでとう」に、紛れたくなかったから、
『だったら一番最後に言おうかなって。』
「つな、っ。」
『やまもと、泣いてんの?』
「…もー洪水みたいになってんぜ」
『ははっ、嘘つき』
嘘じゃねーよーと茶化すと、ケータイの向こうからはまた笑い声が聴こえた。
やべーのな。
マジで泣きそう。
だって、今日は無理って思ってたから
今日っつか、今年は、のレベルで無理って思ってたから、
スゲー不意打ち。
やっぱツナには敵わなねえな。
「つな」
『ん?』
「サンキューな」
『…うん』
「だいすき」
『おれも』
『俺も』の先は、言ってくんないけど、もうじゅーぶんなのな。
オレ、生まれてきて本当に良かった。
------
君と出会えた事が、
人生で最大のプレゼント
後日、ツナくんに「遅れてごめんね」なんて言われながらプレゼントを貰えば良いよ!!