十代目に一心に愛されているアイツが正直に言うと羨ましかった。



とてもお優しい方だ。
ギャーギャー騒ぐ女共にもアホ牛にも、誰にだってその優しい笑みを向けて接する。
それこそ大空のように、全てを包んで




だけど、アイツにだけは違った。
アイツに向ける笑顔だけは、他の誰にも見せない色を含めて笑い、
心から頼っているように見えた。
(そんな表情に気付けたのは、俺があの方しか見ていないからだ)

アイツを他とは違う様に見てる
特別だと思っている
恋を、していると

気付いたのと同じくらいに、十代目から「実は、」とお話頂いた。

「獄寺くん、には話ておきたくて。
 俺、山本と───」

それから俺はいつしかあの方を少し遠巻きに見るようになっていた。


決して、軽蔑してでは無い。

近づき難くなってしまったのだ。
なんだか今までのように傍にいると、いつか「邪魔」と言われてしまいそうで。
(それだけは、耐えられないことだから)





「ハッピーバースデー!!」


今日は、アイツの誕生日らしい。
そう言えば去年も祝った気もするが、全く興味のないことだから忘れてしまった。


人に囲まれてヘラヘラしてるアイツが大嫌いだった。
感覚的なところも
リボーンさんに気に入られているところも
いつまでも「ごっこ」だと言うところも

本当は、もう「ごっこ」なんかじゃないって知っていて、知らないフリをしているところも

全てが気に入らなくてイラついた(あぁそれと俺が嫌っているのを知っていて、近づいてくるところも嫌いだ)



本当だったらこんなところにいないで、部屋に一人でいるか、修行をしているかだと言うのに、

十代目が、


「明日、山本の誕生日、なんだ。獄寺くんも、良かった、ら」


十代目が今までに無いくらい遠慮がちに仰るから
いつも通りにあんな奴の誕生日なんてとか言いつつお誘いを受けた。




「獄寺」
「…なんだよ」


壁に寄りかかって、いかにもつまんなそうな顔をしていた俺に近づいてきた。

こっちくんな。
お前の誕生日会なんて、ダイナマイトで滅茶苦茶にしてやりたいのを必死で抑えてんだ。
十代目の為に抑えてんだ。
それ以上近づいたらマジでぶっ殺すぞ。



「オレの誕生日なんか、知らないって思ってたけどな」
「知らねーよ。でも十代目のお誘いを断るわけねえだろ」
「…そのツナのことなんだけどな?」


そう言ってアイツは、俺と同じ様に壁に寄りかかった。
視線の先には十代目。
十代目を見つめるその眼は、十代目と同じ色をしていると、俺は知っている。


「ツナがな。最近、元気ねえんだ。」
「…はっ、お前がうぜえんじゃねえの?」


そー言うなって、とアイツは笑って見せた(その笑い顔も嫌いだ)


「『獄寺くんが俺を避けてる気がする』って。」
「    。」
「俺、全然気付かなかったんだけどな。」
「………。」


そりゃお前はいっつも俺に避けられてるからな、と
そう言おうとして声にするのを止めた。

本当ならば、右腕である俺が十代目を遠巻きに見る(直接的に言えば避けている)などと、そんなことは許されないことだ。

だから、ここでそれを言ってしまえば、右腕の位置すら、コイツのものになってしまいそうで


「ツナとオレのこと、」
「聞いた」
「ツナのやつ、『引かれちゃったかな』とかスゲー寂しそうに言って」
「…お前に?」
「そうそう。オレに」



正直キズつくよなーとまた笑った。
ざまーみろって俺は言い返して。


「そんでな?」
「何だよ」
「オレも、今の中から獄寺がいなくなんの、イヤだしな、?」
「…は?」
「ツナに、獄寺が嫌がるならオレと付き合うのやめるか?って訊いたんだ。」


何言ってんだコイツ。
俺が嫌がるなら?俺の為?
ふざけんな


「したらツナな?」


ふざけるな、と言おうとした時、苦しそうな顔をしたコイツに遮られた。
いつもなら遮った言葉さえ遮って話を続けるのだけど、
それが出来なかったのは、


「めっちゃくちゃに泣きながら、『どうしよう』って」



十代目は、お優しい方だ、

そんな事、わかっていた筈なのに


「邪魔」なんて、




隣にいるコイツと同じ様に、視線を十代目へ。
偶然に目が合うと、すこし寂しそうに、でも柔らかく、あの方は笑った。

それが、とても、







「Buon Compleanno」
「へ?なんつった?」
「一つだけ言っとくけどなぁ。」
「へっ?」

「俺は、ボンゴレ十代目の右腕だ。何がどうなろうと、変わらねえよ。」

「…そっか。そうだな。」



うっとうしいコイツから離れて、十代目の傍へ

俺が笑うと

十代目も笑って下さった。


ちらりとアイツを見れば、やたらと嬉しそうな顔。
少しムカついた。


しょうがねえから、


祝ってやるよ。



(あぁもしかしたら俺も恋をしていたのかも)


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「誕生日おめでとう」


ツナも山本も、獄寺くんが大好きなんだよ!
って感じを伝えたかったのですが見る人によっては黒山に見えてしまうかも…。

そして、山バらしからぬものを書いてすいません><
でも山バでやりたかった…!





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