ツナが死んだ。

いやだいやだしぬなしぬなって何回も叫んだ。
だけどツナは死んだ。

ちっちゃい身体にキズをいっぱいつくって、ズタズタになって、あんなに軽くってあったかかったツナの身体はどんどん重くなって冷たくなって

あぁヤダつながいなくなる。
つながオレのなかからいなくなる。


生きて


なぁつなそんなちっちゃい声じゃなんも聴こえねぇよ。
な。お願い。
もっかい言ってくんね?
今度はちゃんと聞くから。
な、つな、



「───つな、」



マフィアになって、野球もやめて、
裏の世界の汚さをたくさん知った。
そのうちオレは何も信じられない人間になってた。

自分すら、信じられない人間になってた。

どうせ裏切られるなら自分から裏切って、


オレ、すげぇウソつきになっちまった。
今のオレの言葉、ウソとホントのどっちが多いかなんてもうわかんねぇや。


あれ、オレ何でこんなことやってたんだっけ、何の為だっけ、あれ、?


「やまもと、ごめん、ごめんね」


オレがボロボロになるとツナが謝りながら泣くんだ。
オレよりボロボロなくせして泣いて謝るんだ。
やまもと、ごめん。こんなとこ連れてきてごめんね。ごめん。って何回も、泣きながら。
その涙が、この世界で唯一、キレイなものに見えて、唯一、信じられるものに見えて、

オレは思わず笑った。

したらツナは涙ボロボロ流しながらつられて笑うから、
ツナの笑顔が嬉しくて今度はオレが泣くんだ。


あぁそうだ。
この笑顔の為にオレはここにいるんだ。
ツナの為ならなんだって信じる。
なんだって。


涙と一緒に自分の中の汚いもん全部出して、まっさらになったそこにはつながすっぽり収まるんだ。


すげぇツナ。
ボロボロだったオレの中身、あっとゆーまにさっぱりキレイになっちまった。
人間洗浄機?(一家に一台的な)(ふざけてそんなこと言ったときがあった)


「つな、もう大丈夫。」
「やまもと…っ」
「ははっ。なきむし」
「…やまもとだって泣いてんじゃんか」
「うん」



(それからもたまーに誰にも見つかんないように泣いたことはあったけど、)(それでもツナにはすぐばれた。)(そんでツナがまた泣いて)(オレが笑って)(ツナも笑って)(2人で泣きながら笑ったんだ)





そんなに愛しかったツナが、もういない。

いない。


つなのクローンとか出来ないかな。
出来るわけねぇか。
出来てもそんなんつなじゃねぇし。

なぁオレつなの笑顔の為にここにいたんだぜ?
それがなくなったらオレどうしたらいい?

かみさまよりも信じてた、つながいなくなったら、オレはどうしたらいい?



(───あ、)


(つな、の後、追っかけりゃいいか。)


したらまたつなに会えんじゃん。
それは本物のつなだもんな。
オレ頭良くね?

つなはきっと泣きながら怒るけど、そんなことよりつなに会いたいから、



(…うん、つな。今、いくから)





自分の首を自分の手で締めた。


ぎゅ、と力を込めると
目の前からぼやけてきて、だんだん周りの音が聞こえなくなって、
やたら心臓の音が大きく聞こえた。

ドク、ドクっていってる心臓がどんどん早くなってって。


自分の首を締めながらそればっか聞いてた。



(つな、)



  (  つな)



「───やまもとっ」
「っ!?…っげほ、!!」


急に名前を呼ばれて手が緩んだ。
とたんに広がったそこから空気が一気に入って思わずむせる。

息を止めてたときよりも、

息をしてる方が苦しかった。




「…つな、?」

辺りを見まわした。
つなの声だ。
つながいる。つなが生きてる。


だけど何処にも見当たんなくて、
どこに隠れてんのって机の下とかベッドの下とか探したけどやっぱりどこにもいなくて、


気のせいかってまた首を締めた(そんときオレは泣いてた)(やっぱりつなはいないんだ)



ドクドク心臓の音。

目の前がぼやけて、


心臓の音だけが聞こえる






一番大きく心臓が跳ねると、




決まってつながオレを呼んだ。





「…はぁ、はぁ、…〜〜〜っ、ははっ」



なんだつないんじゃん。


なんだよ。
いつの間に、こんなとこにきたんだよ。


「つな、……  っ、つなぁ」


胸の辺りでシャツをぐしゃっと握った。

つながいた。
ココにいた。

ココにつながいるなら、
オレ、死ねないな。
もっかいつな死んじゃうじゃん。

つながココにいるなら、なんの問題もないし。




「やまもと」





ドク、と心臓の音。

その度に、つなが話し掛けてくる。

「今日も」

オレはぼたぼた泣いてて、

「生きて」

あぁ、そいやつなが最期になんか言ってたな、なんて思い出してた。

「今日も」

まぁ、いつか遠い先、


オレとつながもっかい死んだら訊いてみよう。



「生きて」


「そして」



それまでオレは笑ってよう。

「今の」



「ままでいて」



オレが笑えば、
つられてツナも笑うんだ。


ツナがココにいるなら
オレはココを信じよう。





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ゆうしん‐ろん【有神論】
〔宗〕(theism)
@世界を超越して存在し、世界を創造し、世界に摂理を働かせている人格的な唯一の神を信ずる立場。
A一般に無神論に対して、何らかの意味で神の存在を認める立場。
(広辞苑)



respect by RADWIMPS『有心論』



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