「ねぇ、山本。もしさ  、?」


今年も七夕どんぴしゃで降った雨を窓から眺めながら、
ツナはぽつりと呟いた。
声をかける、とは違う、ただのひとりごとのように。


「ん?」

ツナのひとりごとに、ツナの部屋でベッドに寄りかかっていたオレは、雑誌から目も逸らさずに返した。
ツナだってこっち見てないんだ。きっとオレが声だけの返事をしたことなんて気づいてないかもしれない。

ぱらりと雑誌をめくる。
あ、今絶対ツナのほう向いてないのばれた。


「もし、だけど」
「ん」
「一年に一回しか会えなくなったらどうしよっか」


ツナは小さく笑ったあとに、なんか女の子みたいだね、ってまた呟いた。
そーか?なんて返すけど、ツナにとってはひとりごとだ。
オレがなんて返そうと関係ないのかもしれない。
ツナの言葉が切れたらひとつ返して、またツナが続けて(ただ、ツナがオレの言葉を最後まで待つから、)(それだけが唯一の会話ってとこかも)

雨が地面をうつ音が響く。
オレはこの音が結構好きで、それを前にツナに言ったらすこし驚かれた。



「それってさ」
「え?」

ツナがこっちを向く音が、雨の音に混ざる。
オレが雑誌からツナに目を映すと、ツナはいつかの雨の話をしたときの顔になってた。
返事されないと思ってた?それならツナはずいぶんオレを見くびってる。


「ツナとオレ、二人とも納得して離れてんのか?」
「 んー…、 してないんじゃないかな  ?」
「なら簡単だって」


会いに行くぜ。つか、迎えに行く。



そう言った山本は、 山本の、頭のなかにどんな状況が、思い浮かんでるのかわからないけど、なんとなく安心した俺はやっぱり女の子みたいで少し恥ずかしかった(山本に頼りすぎなんだよ、俺)(そんなのだめだって、)(わかってるのに)


「 で、もさ?」
「お?」
「自分たちの好き勝手やって、離れさせられたんなら我慢しなくちゃだめじゃない?」
「そんなんぜってぇありえねぇもん」


やたら自信満々に、即答だ。
だからこの先に続く言葉に俺はいつも期待してしまう。


「ツナはすげぇやつだし」

ちょっと待って。それはない。
でも俺が返す暇もなく、山本は続けた。

「そのツナが、オレの野球好きだっつーんだから、もっと頑張るし、」

それでまたケガしたら怒るからな。

「つっても、野球はオレも好きなんだけどな」

うん。よく知ってる。

「獄寺がいないときだって勉強頑張ってるし」

すごい時間かかるけどね。

「ツナのためなら、命張れるし」
「それは俺嬉しくない」
「わかってるって」


いつもの太陽みたいに笑う山本は、なんだかこの雨の夜には、似合わないような、不思議なような。


「結構頑張ってると思わねぇ?」
「オレが全然じゃん」
「だから、すげぇやつだって」
「却下」
「えー」


そう言うけど、具体的な言葉がほしいわけじゃないんだ。
本当は、山本がそう言ってくれるだけで、もうオレの自慢なんだよ。


「まぁとにかく」
「え?」


そう言って雑誌をほっぽった山本との距離が近くなる。
山本が、俺を窓と挟んで座った。

距離が縮まれば自然と手を伸ばすようになったのはいつからだろう。

だって、俺が手を伸ばす前に、そこに山本の手があるから、


「ツナは誰にもやらねぇって」
「…キザ…」
「えー」


そのあとツナは、困ったような顔で笑った。

ホントに、ツナの一人事だ。
オレはそんな心配しねぇし、そうなってもなんも変わんないし、変わるつもりもない。
どうなったって、ツナが好きなんだから、

それだけあればなんだってできるんだ。

オレと離れるって決めたツナを、
一回決めると意外と頑固なツナを、

説得することだって、



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あれ?なんか暗い…?
山ツナの未来は明るいゼ!!ってしたかったんですが…。

遅刻七夕でした。




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