暑い、と一言呟くと、からからと笑う声が聴こえて、だいすきなその声を、聴き逃さないように暑がるフリをして黙って聴いた。
ねぇ、やまもと、
俺ね。
夏休みに入っても、補習を見事に食らってしまった俺は、ほぼ毎日のように学校に通っていた。
(……あっつい)
全開にした窓から入る風が、汗を乾かす。ただし、少しだけ。
すぐにまた汗は流れて、爽快感なんてあったもんじゃない。
カキーン!
(……あ)
校庭から突き抜けるような音。そのあとに聞こえた、
声は、
「…やまもと」
山本、だ。
小さく呟いたそれは誰にも聞かれることもなく暑さにとかされて、
窓から外を眺める。
外では運動部が夏休みでも活動をしてて、サッカー部とか陸上部とか、あと野球部とか野球部とか。…野球部とか。
その中で、山本を見つけるのなんて簡単だ。
マウンドか、人が集まっているその中心を見ればすぐ見つかる。
(……あ)
マウンドの彼と、偶然に目が合って、
大きく手を振られたから俺は小さく振りかえした。
がんばれよーなんて山本の声がこの距離でもはっきり聴こえたのは、山本の声が良く通るからか、俺の耳が山本の声を良く拾うように出来てるからか。
あついーって声を張り上げれば、ちゃんと届いたみたいでからからと笑う声(俺より山本のほうが暑そうなんだけどね)(ごめん)
ぶんぶんとまた腕が振られたけど、それには振り返さなかった。
そんなことをしていたら、山本は先生に怒られて、野球に集中(ちょっと残念)(もう少しで、良かったのに)
でも、最近ダメなんだ。
山本と話してると、つい言ってしまいそうになるんだ。
つい今だって、
ねぇ、やまもと。
俺ね、
俺、
「……きみが、すきだよ」
小さく呟いた、その声は、
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つなくん片想い。
ベタですいません。