屋上ダイブ+同棲+数年後





「   んだ!」

違うんだ

「……に、何かに一生懸命  だこと、」

そう、

「そんなすごい  ……なくて… 」


本当は、────




「まてよ、ツ────」



「   …な、」
「、 ん」
「ツーナ」


ゆさゆさと身体を揺らされてあぁ自分は寝てたのかと、ぼやけた意識の中で気付いた。


「寝るならベッド行けって」
「…んんー」
「んんーじゃなくてー」


二人で暮らすには小さな、8畳1Kの部屋。その隅に置いたベッドは一つ。ここに山本と暮らし始めたときは、ベッドの横に敷き布団も使っていたのに、今はもう押し入れに入れたままでもうどれだけ経ってしまったのか(…多分、一年とちょっとくらい)(一年は過ぎてしまったはずだ)(多分)(理由は、敷くのがメンドクサイ)(…ってことで)

枕代わりにしていた座布団からなかなか頭を上げれないでいると、身体が宙に浮く感覚。本当なら、いつもなら、俺が畳で寝てるといつの間にか山本がベッドまで連れていってくれるのに、今日は何故か起こされてから抱っこされて。

寝呆けた視界で時計を横見ると、日付が変わって10分ほど経っていた時間だった。意識が落ちる直前まで耳になんとなく入っていたバラエティー番組を思い出すと、もう2時間も寝てしまっていたことになる(楽しみにしてたのに案外面白くなかった)




「 がう だ!」



抱き上げられる、腕の中、さっき見た夢を思い出していた。
何か、懐かしい夢を見た気がするんだ。


必死に、

…なんだっけ、なんの夢だったっけ


「なー、ツナー」
「…んー?」


「… ありがとな」


「ツナ!」


……あぁ、そうだ。



「 なんのこと?」


いつかの、もう何年も前のあの夢を見たんだ。

毎年、このくらいの季節になんか山本の様子がおかしいときがあったのには気付いてた。
だけどなんでおかしいのか、何がおかしいのか、今までまったく解らなくて、いつもいつも、お礼を言われては首を傾げてたんだ(お礼を言うと、すっきりした顔しちゃって)(理由を訊いても答えてくれないし)

今だって、


「ん、何でもねぇよ」



そっか、そう言えばあれは今くらいの季節だったっけ。懐かしいな。



ベッドの側にある窓から、風が入って気持ちが良い。ゆっくりと、シーツに身体が下ろされるけど、俺の腕は山本の首に絡めたまま。悪戯をしていると勘違いされて、脇腹を擽られたから、背中を勢い良く叩いてやった。


「電気消すから」
「ん」
「離して。な?」
「…んー」
「…こーら、ツナー?」


曖昧な返事は意味が無くて、逆にぎゅぅっと絡みついて。

こら、なんて怒ったフリなの解ってるんだ。山本がこういうのが好きなの、知ってるんだ。



「ちがうんだ!」


ねぇ、山本。


山本の全てが終わりかけたあの日から、俺たちの全ては始まったんだよ。


だから、



「本当はね、」
「ん?」
「お礼を言わなくちゃいけないの、俺のほうなんだ」
「…ツナ?」


たくさんの、たくさんのありがとうは、



本当はね、本当は



「俺に、相談してくれて、」
「………」
「俺に助けさせてくれて」



俺を選んでくれた、

キミへ。





「ありがとう  やまもと」


そこまで言うと、山本は、困ったような嬉しいような、色々混ざった表情をして

「…ツナ」
「ん?」


「なんのこと?」


それから、俺の大好きな笑顔で笑った。




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2011.06.29



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