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あの人はあいしてるとかすきとかをあまり伝えてくれない。ご丁寧に教えてくれた前の恋人さんたち曰く、彼女たちには言ってたどころか言いまくってたらしいのに。私ってあいされてない?すかれてもない?ずーんと崖から突き落とされたみたいに感じた7年生の秋。そして本当に私のことをすきでいてくれているのかを疑い始めたのはそのとき。なんだかんだ言って今だって一緒にいるし、誕生日や記念日とか、巷の恋人たちがきゃいきゃい騒ぐようなイベントのときには可能な限り長く一緒にいる。そのときには満たされるの、ああ私って幸せ!って。でも、いくらそう思って満足しても1日経てば消えちゃう。今頃何してるんだろう、今頃誰といるんだろう、今頃誰のことを考えているんだろう。馬鹿みたい、分かりやしないのに。

「あの人は本当に私のこと、すきかな」
「……あなたっていつもそれね、もう飽きちゃったわ」
「………ごめん」
「まぁ不安に思うのもしょうがないと思うけど、少しは彼のことを信じてあげなくちゃ可哀想よ。あの人の恋人はあなたなんだから」

リリーの柔らかい手が私の頭を撫でる。そうだね、少なくとも私はあの人の恋人という立場。「2週間に1回のリリーとの会合at漏れ鍋」で、私から提供される議題は大抵「あの人は本当に私のこと、すきかな」だ。馬鹿みたいに1つの話題しか提供できない自分も、リリーをうんざりさせている自分も、リリーに何度大丈夫と言われても自信が持てない自分も、嫌だ。カフェラテに浮かんでいたスチームミルクはもう掻き混ぜられて、コーヒーと同化してしまってもう何が何だかわからない。これはカフェラテだったのかも怪しいものになってる。

「ちょっと、どうしてマグカップを睨みつけてるのよ。トムが心配そうに見てるわよ」
「……これ、なんだったっけ」
「カフェラテじゃないの?自分が頼んだものも忘れたの?」
「…そうだよねぇ、カフェラテなんだよねぇ」
「………私、今ほどあなたのことを意味がわからないと感じたことってないわ」
「私もそう思うよ」

リリーは思い切り不審そうな顔をして、紅茶を飲む。失礼な。私にだって人権はあるんだよ。ああでも、リリーってそんな顔で紅茶を飲んでるだけなのに映画の中みたいにすてき。私が男だったら絶対リリーのことをすきになってる。とっても素直なリリーの言葉は時々痛すぎるくらいに私のハートに突き刺さるけど、それでも優しいんだもん。ジェームズくんにあんなに愛される理由もわかる。私がリリーの恋人だったらもう愛しすぎてジェームズくん以上に鬱陶しがられる自信がある。……何の自信だっけ?リリーがケーキに手をつける。不安ってまるで脂肪みたいだ。摂取して、消費できなきゃどんどん身体に付きまとっていく。努力しなきゃ消すことなんて出来ない。

「私、リリーみたいに綺麗に生まれたかったな」
「え?」
「そしたら、ジェームズくんがリリーを愛するように、あの人は私を愛してくれるでしょ」
「……どうかしら。ジェームズとあの人を同じ土俵で考えるべきじゃないわ」
「……だよねぇ」
「どうしてそんなに不安なの?」
「…………足りないんだもん」
「え?」
「あの人って言葉少ななひとなんだよね、私だけには。……でもあいしてるとかすきとか、言ってほしいもん。だってそれが証明になるでしょ、一瞬だけでも。ハグとかキスとかだって、嬉しくないわけじゃないよ。でも、何ていうのかな、身体だけの関係っていうか。その場では満たされるけど、すぐ消えちゃうの」
「……………」
「ジェームズくんって思いっきり愛情表現するし」
「……恥ずかしくなるくらいにね」
「もう4人で歩いててもお構いなしっていうかさ、むしろ何考えてるの!ってくらいじゃない?」
「そうね、かなり迷惑ね」
「そんなジェームズくんがすきなくせに」
「………意気消沈しているあなたのために奢ってあげようかと思ったけどやめたわ」
「えぇ!?……んー、でも良いや、私が奢ってあげるよ」
「え?」
「いつも同じ話ばっかり聞いてくれるお礼。リリーには迷惑かけっぱなしだから」

トムに向かって会計の合図をする。ぱっとやってきた人の良い顔に「美味しかった」と伝えれば安心したように微笑まれる。いいねぇ、何度も来たくなっちゃうよ。カフェラテも本当に美味しかったしね。鞄から財布を出そうとすると、リリーはお手洗いに行くと言ってきた。頷いてトムに少し多めにお金を渡す。トムはさかさか行ってしまった。漏れ鍋はいつもの通りざわついていて、そのざわめきが私を不安にする。前はひとりぼっちなんて全然気にしなかったのに。いつから駄目になったのか、考えてみるとやっぱり7年生の秋からだった。もう全部あの人のせい。カランとドアが開く音がして、そっちの方を向くと全ての元凶である見知った顔だった。溜め息を吐かなかった私を誰か褒めて。

「おお」
「……何でいるの」
「呼ばれたから」
「え?……ああ、リリーね」
「ご名答、流石親友だな」
「………今日は2週間に1回のリリーとの会合at漏れ鍋なの、邪魔しないで」
「リリーはもう帰ったぞ」
「…わお」
「後は任せた、もううんざりだって言ってた」
「……わお」
「それに全部聞かせてもらった」
「………わお」
「何不安になってるんだよ、ばか」
「……ばかだもん」

シリウスが言うように私はばかなのかもしれない、ただ私はシリウスに着いていけばいいとは思えない。無条件に信じられるほど素直じゃないし無邪気でもない。信じたい、と思うのは本当。シリウスがうそつきだとも思いたくない。不安になったときに、今みたいに来てくれるんだもん。感謝してるよ、もっとすきになっちゃうよ、でも盲目的に信じられないのは本当にすきじゃないってことなの?もっと知りたいと思うのは、本当にすきじゃないってことなの?

「不安にさせたなら悪かった。でも俺たちイシンデンシンだと思ってたし」
「……え?何、それ」
「え、間違ってるか?ニホンの言葉じゃなかったか?」
「……ばか」
「え?」
「合ってるよ。……わがままでごめんね」
「気にしてない、いつものことだろ」
「…………」
「俺はちゃんとお前のことがすきだ、あいしてる」

私だって泣きたくなるくらいすきだしあいしてるよ、シリウス。イシンデンシンな私たちだからハグをしてキスをすれば伝わるかな、きっと足りないよね。だから私も言葉にするよ、

(シリウスがだいすき、あいしてる)


亜緒依さま、リクエストありがとうございました!初めまして、cooと申します。「シリウスの切甘夢」とのことでしたがいかがでしたでしょうか?お気に召されたら嬉しいです。私の書くシリウスを大好き、さらには亜緒依さまのシリウスへの気持ちが復活なさるきっかけになったと言ってくださるなんて、私は本当に幸せ者です。40000打を迎えられたのも、亜緒依さまを含め、閲覧してくださる皆様のおかげです、ありがとうございます。受験勉強も頑張らせて頂きます。また戻ってきますのでそのときにまた色々更新出来たらいいなぁと思っています。これからもよろしくお願いいたします、だいすきです!