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「#エロ」のBL小説を読む
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「これ、何?」
「あぁ、またもらっちゃったの」

飾られた花に嬉しそうに微笑む顔にため息をついた。どうしてこうも能天気なんだ。男から花をもらう理由なんて、考えればすぐに分かることだと思うが、この顔から判断するに絶対分かっていない。白い指先で花弁に優しく触れる。こんな優しい顔をさせたり花を愛でたりさせた、顔も知らない相手に嫉妬する。そういえば、最近俺はなにか彼女にあげただろうか。別に貢ぎ貢がれの関係でないことは胸を張って言えるし、自分がなにかをもらいたいわけでもない(、勿論もらえたら嬉しいが)。だけど、なにかをあげることで彼女がそんなふうに笑ってくれるならどんなものでもあげたくなる。

「どうしたの、眉間にしわ」
「別に」
「何か怒ってる?」
「怒ってないさ」
「うそ。ねえ、知ってた?あなたっていつも何か怒っているときは髪の毛をくしゃくしゃにするのよ」

「ポッターくんそっくりにね」とクスクス笑う声に、髪に触れていた手を下ろした。なんだか気に食わない。まるで分かりやすく、子供っぽい自分を見透かされたみたいだからだ。でも嫌じゃない。そこまで俺を見てくれているという気がしたからだ。まぁこんなふうに思ってる自分も子供か、彼女の一挙一動に翻弄されているんだから。

「私、なにかした?」
「……お前が悪いんじゃない」
「じゃあ誰が悪いの?」
「虫かな」
「虫っ?ど、どこにいるの?」
「お前の周りにぶんぶん飛んでる」
「や、やだ!殺して!」
「おいおい、物騒だな」
「だって嫌だもの!」
「お前が嫌うような虫はいないさ」
「な、なんだ、うそをついたのね……。あら、じゃあ虫ってどういうこと?」
「虫にも色々な虫がいるってことだ」
「よくわからないわ」
「わからなくていい」
「……なんだか馬鹿にされてるみたい」

と言った彼女を見ると頬を膨らませ、ひどく不満そうな顔で俺を見ている。その姿を笑うとさらに頬が膨れた。こういうところは本当に子供みたいだな、彼女にお熱な顔も知らない男はこんな彼女を知らないだろう。人見知りであまり感情を表に出そうとしないからだ、俺の前でもそうだった。今じゃ見るかげもないけど。

「あら、もう怒ってないのね」
「……もともと怒ってない」
「そう?」
「………綺麗な花が欲しいのか?」
「いきなり何?」
「いや、……」
「別に欲しくなんてないわ」
「そうなのか?」
「もらえたら嬉しいけれど、別にシリウスから欲しいものはそれじゃないもの」
「……なんだよ」
「秘密」
「はぁ?」
「願い事って、もし言ってしまったら叶わなくなるのよ」
「俺が叶えてやるよ」
「あら、すごい自信。叶えられる自信があるのかしら?」
「そんなに難しいものなのか?」
「そうね、私は時々不安になるから」
「……俺のせいで?」
「ええ、あなたのせいで」
「…………」
「まぁどうしようもないことなのよ、あなたが落ち込む必要なんてこれっぽっちもないわ」
「……俺のせいでお前を不安にさせているなら、落ち込むに決まってるだろ」
「あら、可愛い」
「馬鹿にするなよ」
「してないわ、嬉しいだけよ」

「あなたがそう言ってくれるだけで、私の不安は少し解消されるんだもの」と微笑む。釈然としない。こういうことは良くあることだ。気になって尋ねてはぐらかされて終わる。はぐらかされているということは分かっているけど、どうしようもない。彼女が絶対に話したくないことだからだ。さっき花を愛でていた指先で俺の手をなぞる。誘っているのかと思えばそういうわけではないらしい、以前調子にのるなと怒られたから。期待するようなことをしなきゃいいのに、とも思うが黙っておいた。きゅっと手を握ろうとするとやんわり止められる。

「邪魔しないで」
「……何だよ」
「良いから、好きにさせて」
「……まぁ良いけど」
「これも不安をなくす1つの方法なんだもの」
「え?」
「だれも知らないことを知れるって素敵ね」
「………嫉妬してるのか?」
「してるわ、いつだって」
「……本当に?」
「何よ、私だっていつも物分かりの良い女じゃないのよ」
「いや、そんなことは思ってないけど」
「何それ、どういうこと?私が物分かりの悪い女だって言いたいの?」
「別にそんなことは言ってないだろ」
「……嫉妬なんて日常茶飯事だわ」
「え?」
「知ってた?角のお花屋さんの女の子って、あなたが傍を通るときにいつもうっとりした表情をするのよ。私が傍を通るときにはしかめ面しかしない癖にね。それに一緒に出かけるときもそう。あなたと行くといつも店員さんがちゃんと仕事をしてくれないんだもの」
「……………」
「あなたが女慣れしたような仕草をする時も少しいや。私の髪を撫でてくれるときも、キスをしてくれるときも、そう感じてしまうのよ」

「こんなこと、言うつもりじゃなかったわ。……重い女と思われたくないもの」と自嘲気味に微笑む。その唇にただキスをする。別にそんなに女慣れしているわけでもないと思う、でも不安にさせていたのは事実だ。テクニックもなにも要らないらしい。ただのキスが嬉しいなら、いつだってしてやる。まぁ俺としては、一緒に居られるだけで幸せなんだけど。お前もそう思ってくれてるよな?そうじゃなきゃ、そんなに嬉しそうにしてくれないだろ。お前の知らない俺なんかいないのは分かりきってる。だってただ俺はお前に夢中なだけなんだから。


サキさま、リクエストありがとうございました!「恋人設定で彼女が結構モテモテで焼き餅妬いちゃう甘めなシリウス夢」とのことでしたがいかがでしょうか?お気に召されたら嬉しいです。これからもよろしくお願いいたします、だいすきです!