×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -

それでも、私は彼に惹かれていかないわけがなかった。あの屋敷にいるときよりも彼は輝いていた。そのことに私の両親がいい感情を持っているわけがなかったし、私は律儀に長期休暇のたびに帰省して、彼とはどのように関わっているかを詳らかに話さなければならなかった。ホグワーツに入学する前からだんだん気づいてきていた、もう彼とは距離を置くべきだという明言されない指示を無視しきれなかった。ローラにも彼のことは話せなくなった。「お嬢様、シリウス坊ちゃんとご結婚なされるのに、シリウス坊ちゃんのお話をもうローラには話してくださらないのですね」と言ったローラに、もうその予定は崩れているとは言えなかった。


そもそも、別に私たちは婚約者だというわけではなかった。おそらくその予定、というだけだった。母も父も、私が彼と結婚するなんて明言したわけではなかった。いつでも消せるようなあいまいな関係だった。それでも、私は期待していた。あれだけあの屋敷に行って、周りにも求められていると思い込んでも仕方がなかった。それに、当然のごとく嫌ではなかった。彼のすべてを知っているなんておこがましいことは言えなかったけれど、彼のことを知っていくほど、私は彼のことをすきになった。親同士が決めたことでも彼とずっと一緒にいられる権利を与えられるなら何の後悔もしないだろうと思っていた。「シリウス坊ちゃんは、最近お元気でいらっしゃられるのでしょうか」とキィキィ話すローラに、私は初めてお仕置きを命じた。


私は家族を大事に思わなかったわけではないし、家族が大事にしている信条も当たり前だと信じていた。だからこそ、彼が話していたことに対しては最初は違和感しか感じなかった。だけど、他の学校やマグルの世界での学校生活は私には知る由もないけれど、私にとってホグワーツは十分すぎるほど広い世界だった。私の家族の中での当たり前は、世界の当たり前ではないことを知った。ただ、それを理解したとしても、私は私の家族を否定できなかった。つまり、彼の家族も否定できなかった。彼を否定する私の、彼の家族を嫌だと思うほど見てきたことと同じくらい、家族を否定することで輝いていた彼を眩しいと思いながらも見てきた。ローラは私の家族と同じくらい、彼を否定した。私はひたすら黙した。


いっそ、彼と関わらずにいられたらよかった。彼が私を嫌って、もう私とは話さないと言ってくれたらよかった。そう幾度願ったかわからなかった。ただそれと同時に、婚約者と言いきれない関係を断たれたとしたら、私のなかでも何かが死んでしまう気がした。あいまいな関係で、あいまいな感情のまま、私は彼と関わり続けた。彼は何も言わなかったし、彼の弟も何も言わなかった。私の家族と同じような家系で育った人たちにはあまりいい感情を抱かれてはいないことはわかっていた。彼とこのまま関係を保つことは何のメリットも生み出さないこともわかっていた。それでも、私は彼のそばにいたかったし、否定も肯定もせず、彼をそのまま見つめていたかった。彼は、私に対してどのような感情を抱いていたのかは明らかにしなかった。なのに、彼は私に口づけをした。理由は言わなかった。珍しく暑い夏の日だった。そして、彼は家を去ったとローラが教えてくれた。彼は最初から私には何も言ってくれなかったのだ。