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「シリウスよ。よろしくね、名前」彼を紹介した彼の母も十分すぎるくらい美しくはあったが、彼の方が数段、見たこともないくらい美しかった。私は恥ずかしくなって顔を伏せたくなったが、できるだけ動揺を見せないようにということが美徳だと信じていた。いつも私についてくれていた屋敷しもべ妖精のローラにはわかっていただろう。でなければ屋敷に帰ってから、「お嬢様、今日はおつかれになられたでしょう、お顔をめいっぱいお使いになられましたから」などとは言ってこなかったはずだ。彼は少しも表情は変えず、私をじっと見ていた。何も言わなかった。初めて会った日はそれだけだった。


2回目、3回目と、彼と会う回数が増えていくたび、会話が増えていった。できるだけ私は大きな口を開けないように、彼の言うことを否定せずに、数歩後ろを歩くように過ごした。彼の弟と遊んでいる彼を、同じ庭で見つめた。ときどき振られた会話に、飽きられないように話そうとするけれど、新たに私が知る彼の表情にめまぐるしさすら感じて、ローラに今日の彼はどうだ、こうだと話す回数が増えていった。


そして彼がホグワーツに入学したとき、彼の、私の父親も母親もそろって顔をしかめた。表情をあからさまに出すことは控えるべきだという訓えにもかかわらず、それほどまでに受け入れがたかったのだろうか。頻繁に行っていた彼の家に行く回数も減った。行ったとしても彼の弟と話すように言われた。彼が家に帰ってきているときでもだった。彼の弟が嫌いだったわけではないし、彼の弟も十分優しかった。だけど、私は彼と話をしたかった。いやいやながら帰宅しているのが分かるようになっていても、ホグワーツでの生活だとか、「秘密だぞ」と前置きをしてから話す、彼がホグワーツに通うことで知った私たちとはかけ離れたマグルの生活だとか、表情をきらめかせながら話す彼に圧倒された。ローラに言えない秘密がどんどん増えていった。


そして私もホグワーツに入学した。彼と同じようにグリフィンドールに入るべきではないと何度も何度もキングスクロス駅でも言われた。空が映された大広間を歩きながら、周りを見渡して彼の姿を見つけた。彼は眼鏡の人や傷だらけの人、少し小太りの人に囲まれて、あまり興味がなさそうに列を見ていた。私と目が合うと少しにやりと笑った。多分気のせいではなかっただろう。私は少し微笑もうとしたけれど上手くいかなかった。重くのしかかるような帽子に、お願いだから私をスリザリンに入れてくれと願った。私にはそこしかなかった。彼を思うとかそれよりも、私はずるくてもいいからスリザリンに入れてくれと願った。大広間に響いた帽子の声に、私は彼の方を見ることは出来なかった。ローラは「おめでとうございます」と手紙を送ってくれた。母も父も安心してくれた。彼とは、どう話していいかわからなくなった。