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昨日、ブラックに言われたことを信じられないまま部屋に戻った。そして、夜になってからあの灰色のふくろうが部屋に手紙を持って飛んできた。手紙に書かれていたのは、ブラックが言っていたことは本当だということ、ブラックがPだったこと、相手がわたしだと知っていたこと、騙していて申し訳ないとは思うけれど自分がブラックだと伝えるともう文通を続けられなくなるのではと思って言えなかったということ、ポッターが噂を流したのはいつまで経っても行動出来ないブラックにしびれを切らしたからだったということ、ブラックに対して何の興味がないと言われて辛かったということ、そしてこれからもわたしとの交流を続けたいということ、それもブラックとして。意味が分からない。どうしてわたしだと知っていたのか、どうしてポッターはしびれを切らしたのか、どうしてブラックは行動を強いられたのか、その行動とは何なのか、どうしてわたしの言葉が辛かったのか、どうしてわたしとの交流を続けたいのか、どうしてPのままではいけなかったのか。ぐるぐると疑問が頭の中を巡った。そして再びいつまで経っても返事を書かないわたしに、ポッター同様しびれを切らしたあの灰色のふくろうは飛んで行ってしまった。そしてそれを見送ったまま、窓のわきに座りながら外をぼんやり見つめていたら、朝になっていた。どういうことなの。寒さで震えながら立ち上がろうとすると、強張っていて上手く立てずベシャッと転んでしまった。痛い……。踏んだり蹴ったりだ。視界が潤む。アリスが呻きながら布団を投げ出して起き上がる。


「何なのよ、もう……」

「ご、ごめん……うぅ……」

「また泣いてるの!?まだ朝よ!!………って、ちょっと、あんたの顔」

「うぅぅ……なぁに……?」

「クマ、酷いわよ」


アリスは眉間に皺を思いっきり寄せてわたしを見てくる。更に涙があふれる。情けなさすぎる。アリスは溜め息をつきながらわたしの方に近寄ってきてハグをしてくれた。アリスには心配をかけすぎだ。どうして心配させるようなことしか出来ないんだろう。泣きじゃくりを上げるわたしの頭を撫でてくれるアリスの手は温かくて優しくてまるで女神さまみたいだ。慈愛に溢れている。


「今度は何があったのよ」

「……P、が」

「え?」

「Pが、ブラックだったの」

「………Pって誰?」


アリスの言葉にバッと顔を上げた。涙も止まった。言ってしまった、秘密だったというのに。サーッと血の気が引いていく。……でも、もう言ってしまったのだから仕方がない。アリスなら、大丈夫だ。それに、ここまで心配かけておいて、何でもないと言うのは無理な話だもの。ふぅっと息を吐くと、アリスが怪訝そうな顔をした。


「あの、手紙のことなんだけれど」

「ええ」

「その、3年生の時に薬草学の教科書にそのまま挟んでしまっていた授業のメモの間違いを直してくれたことにお礼の手紙を出したこと、覚えている?」

「覚えているけど……」

「あのときからずっと、文通を続けていたの」

「あの箱に溜まっていた手紙っていうこと?……す、すごいわね」

「相手はP、って名乗っていたの。……わたしが噂のせいで壊されたものは、Pがくれたものだったの」

「……じゃあ、噂は間違っていなかったっていうこと?」

「そう、Pがブラックだったから」

「あんたは知らなかったんでしょう?」

「……知らなかったよ」

「………で?噂の出所は?」

「ポッターだって。何の行動も起こせないブラックにしびれを切らして、って。何の行動なのかはわからないけれど」

「………あんた、その手紙を見せてもらってもいい?」

「い、いいのかな……。でも全然Pが、ブラックが何を考えているのかが分からないの」


アリスがわたしの手から手紙を取ってじっくり読む。眉間にだんだん皺が寄っていく。美人が怖い顔をすると倍怖いって、アリスが身を以てわたしに教えてくれている気分だ。何度か読み返してアリスはふぅっと大きな溜め息をついた。わたしにはわからないことを、アリスはわかったのだろうか。


「あんた、Pのことはどう思っていたの?」

「え?」

「Pがブラックだって知る前よ」

「……Pにブラックと恋人同士だって勘違いされたことが辛かった。だからわたしはブラックのことを何とも思っていないって書いたの。Pについて何にも知らなかったけれど、Pがわたしのことを何とも思っていないのはわかっていたけれど、わたしはPとの文通を止めたくなかった」

「それはどうして?」

「……………Pのことが、すきだから」

「……どうしてPがあんたのことを何とも思っていないって思ったの?」

「だって、ブラックのことを勘違いされたんだもの!何も教えてくれなかったんだもの!」

「Pは答えを教えてくれたじゃない、あんたがあのシリウス・ブラックと文通してるって知ったら文通を止めるかもって不安だったって。だから何も教えなかったのよ。……それに、勘違いされたんじゃないわ。文面をよく思い出してみて」

「…………『君はシリウス・ブラックの恋人だったのか?彼のこと、君はどう思ってるんだ?』って」

「それ、Pは、ブラックは不安だったってことじゃないの?」

「……どうして?」

「じゃあどうしてブラックはブラックとして、あんたと交流を続けたいと思っているの?」

「………Pとしてでは、駄目ってこと?」

「そうね。もう正体を隠さないってことよ。それが“行動”じゃないかしら」

「………わからないよ、アリス」


寝不足の頭はガンガンと痛んで、眩暈すら起こし出す。アリスはまた女神みたいに優しくわたしの頭を撫でてくれた。そしてベッドまで連れて行ってくれる。わたしのベッドは一夜誰にも使われなかったせいで冷たかったけれど、ずぶずぶと沈み込んでいくみたいに気持ちがいい。考えなくちゃいけないのに。Pの、ブラックの言葉を。……でも、ひとつだけ確信していることがある。Pがブラックだとしても、わたしはあなたと話したいと思うの。小さなことでも、わたしは幸せに感じたの。だから、わたしは、……ああもう眠い。櫓を押して櫂は持てなくても、わたしには考えなくちゃいけないことがあるのに。何で人間を眠らなくちゃいけないように創ったの?神様のバカ。