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昨日、アリスがわたしに言ってきたことは事実無根の噂話だった。わたしなんかとあのシリウス・ブラックが恋人同士?なんて馬鹿らしい。なんてくだらない。接点も何もないっていうのに。わたしとブラックの共通点と言えば、綺麗さは違うけれどこの黒髪くらいだ。寮だって違う。ブラックは誇り高きグリフィンドール、そしてわたしは地味で馬鹿にされがちなハッフルパフ。組み分け帽子にだってハッフルパフって即決された生粋のハッフルパフ生だ。とは言いつつわたしはハッフルパフが大好きだ。大好きだけれど、地味さもよくわかってるつもりだ。


「本当に、本っ当ーに、違うのね?」

「違うよ。逆に何でそんな噂が立ってるか、わたしが知りたい」

「それもそうだわ。おかしいと思ったのよねー。でも、ちゃんと根拠があるらしいのよ」

「なぁに?」

「あんた、一昨日大事なものを壊されたって言ってたわよね?」

「………うぅ」

「もう!また泣く!!あんたって本当に泣き虫なんだから!!」

「だ、だって……」

「あんたは魔女でしょうが!直せたんじゃないの?」

「……それが、パーツが少し足りなくて、完全には直せないの」

「何よそれ!陰湿にもほどがあるじゃない!」

「うぅ……」

「ああ、もう、泣かないでよ。……それでね、そのなくなったものと同じものをブラックが持っていたっていうのよ」

「なに、それ……ただそれだけでわたしのものは壊されたりしたってこと?」

「まぁ………そういうことね」

「……ねぇ、悪い言葉言ってもいい?」

「どうぞ」

「ばっっっかじゃないの、ブラックのことをすきな女の子たちって!」

「……そこまで悪い言葉じゃないわね、ただ声がおおきいわ」


確かに、きっとブラックに恋してる女の子全員がこんなことしようとしてるはずがないけれど。それでも、わたしは悲しい。ただそれだけの理由でわたしの宝物が壊されたりしたなんて。……でも、ちょっと待って。ブラックが持っているなんておかしい。だって、わたしの宝物は、


「何してるの?もう大広間に着いたわよ」


アリスの言葉に慌てて大広間に入ると、大勢の女の子がわたしたちをじっと見ていた。中にはぎっと睨み付けてくる子たちもいた。……何で?もしかして、わたしとブラックの噂をみんな信じてるってこと?わたしのことを恨んでるってこと?うつむいて、そのままアリスとの距離を詰める。アリスの隣に席に着いても、いつもは話しかけてくれる子たちも気まずそうに、わたしから目を逸らす。……それもそうだよね、触らぬ神に祟りなしって言うもの。ああ、また泣きそう。やっぱりわたしに対して冷たすぎるよ。神様のバカ。