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「消えたいと思ったことって、あるか?」

目が覚める。今日はこのセリフで終わったのか。あの夜から何か月か経った。あの夜さらに鮮明にあの人の記憶は書き換えられた。わたしに触れた手も、唇も、わたしを見つめるあの硝子玉のような瞳も、目を閉じればまるで昨日のことのように蘇る。


あの言葉はわたしの中に変わらず存在する。最後だと思っていた夏の悲しみを忘れはしない。ただ、再び訪れた夏の歓びはそれを塗りつぶしつつある。そして再び別れた悲しみも私に突き刺さったままで癒えることはないだろう。伸びをし、ベッドから這い出す。わたしの喉を潤していたナイトテーブルの水差しは空っぽになってはいないのだ。




Ottava