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自分の思いつきに後悔することは少なくないはずだ。仕事後は足が浮腫み、パンプスに食い込んで痛い。帰ってから料理を作るのも面倒で最近は専らテイクアウェイで済ませている。石畳の上をヒールで歩きながら家へと向かう帰り道、思いたったままあの公園へと向かう。毎年の夏、あの人に会っていたあの公園。もう夜だから施錠してあるはずなのに、何故行きたいのかと自分に問うも、ただ行きたいからという単なる衝動のような答えしか返ってこない。テイクアウェイはもう冷めているだろう。ロンドンの夏の夜は冷え込む。今日も寒い。ジャケットのボタンを閉め、ストールを少しきつめに巻きつける。もう少しだ、懐かしさがこみあげる。自然と足が速まる。辿り着き、やっぱり施錠されていることに小さく失望する。前よりも小さく感じる門に、身長は大して変わらないことに気付くのはそう時間はかからない。ふぅ、とため息をつき、門に凭れ座り込む。いっそ、ここで食べてしまおうか。幸い食器らしきものは付いているのだから食べられなくはないだろう。周りを見渡しても誰もいない。袋から取り出し食べ始めると、やっぱり冷めている。味気ない食事だ。ここに来たのは3年振りだ。それまでは毎年来ていたから、久々に感じてしまうだけなのかもしれない。最後だということが受け入れられなくて、その翌年と、翌々年はここに来た。けれど、あまりにも鮮明に蘇る記憶に耐えられなかったのはわたしだった。今は、何故か凪いでいる。食べ終わり、立ち上がる。ゴミ箱に捨てて立ち去ろうとしたとき、バシッという何かが叩きつけられたような音が数回続く。ヒュンと何かが飛ぶ音もする。振り返ると反対側の道に誰かがいる。彼らの間を赤い閃光が飛び交っている。……花火かもしれない。変な若者かもしれない。嫌な予感がするのに動けない。固まってしまう。そして閃光が見えなくなる。ほっとしたのも束の間、バイクの音が鳴り響く。黒い髪が靡いている。そしてこっちに向かってくる。逃げなければ。心臓が凍りついたようだ。ただでさえ痛かった足が、もう限界だというように私を支えるのをやめる。冷たい道路にへたり込み、近付いてくるバイクの音に目を閉じる。