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入店してきたのはあの男の人で、びっくりすると同時にやっぱり間近で見るとさらにハンサム、なんてぼんやり考えてしまった。慌てて在庫の確認を止めてお客さんの元へ早足で向かう。


「何かお探しですか?」

「……ああ、いや、ちょっと待ってくれ」


軽く会釈して男の人から離れる。あんな声をしていたなんて、あんな風に喋るなんて。顔しか知らなかったから、何だかいつもより緊張してしまった。男の人は何だかきょろきょろと花を見渡している。とりあえず在庫確認をまた始めたけれど、集中は出来ない。ショーンさんは接客をしようとしないから、私がまた向かうことになるんだろう。


「いいか?」

「あ、はい」


男の人が指差していく花を数本ずつ採っていく。何か勉強していたのか、と思うくらいセンスが良い配色。私が勉強になるくらい。選び取った花をショーンさんに手渡すとさくさくとまとめていった。その間に私は会計をしていく。


「19.8ポンドになります」

「……あ、そうか」

「えっ?」

「い、いや、何でもない」


男の人は財布を取り出して20ポンド札で支払った。妙に手慣れていない。20ペンス硬貨と領収書を手渡すとそのままポケットに突っ込み、花を受け取って出て行った。


「初めて来たね」


ショーンさんが言った言葉に頷く。あの男の人が本当に来るなんて。目の前で起きたさっきのことがどこか夢のようなことだった。誰に贈るのだろう、もしかしたら自分で飾るために買ったのかもしれない。どちらでも違和感がないのは、あの男の人が花束を持つ姿が余りにも自然だったから。買っていったのは黄色と緑を基調とした花束。あの人だったら緑も似合いそうだけど、それよりも赤い花の方が似合いそう、なんて勝手なことをぼんやりと考えた。




そかな興味