ショーンさんが指差した先にはあの男の人が座っていた。いつもと違うのはこっちを睨んできていること。理由はさっぱりわからない。ショーンさんが指差しているからなのかもしれない。少なくとも指差されて良い気はしないはず。
「そうですね、いますね」
「俺も君が来ている時だけしか見たことがないよ」
「えっ、ショーンさんって毎日来てますよね?」
「うん、スーザンは俺の叔母だから」
確かに目元が似ているかもしれない、と思ったのは血縁関係を知ったからだけなのかもしれない、と思い直して喫茶店をもう一度見るとあの男の人はいなくなっていた。まだ数分と経っていないのに。紅茶のポットとカップはそのまま置き去りにされていて、さっきまで人がそこにいたことを証明しているみたい。……そうではなくて、さっきのショーンさんの言葉が重要な気がする。私が来ている時だけ、あの男の人はあそこにいる、らしい。それって、どういう意味なんだろう。
いいわね、何だか示し合わせている感じでロマンティック
昨日のゾーイの言葉が頭の中で響く。ロマンティック、と言えばロマンティック。だけど現実ってそんなに小説や映画みたいに上手くいくはずがない、たとえあの男の人が映画に出てもおかしくないくらいハンサムだとしても。ぽう、としてしまう顔をパンと叩いて気合を入れなおす。私が生きているのは現実で、今私がいるのはスーザンさんの花屋。箒と塵取りを持って通りに出る。ざっと掃いてから看板をOPENにする。それだけで気合が入り直すから不思議。思わず口角が上がってしまって、慌てて店内に戻った。掃除道具を片付けて、さっきのレシートの続きをしようとするとショーンさんがもうやり始めていた。またやらせてしまった、手際が悪すぎる。少し落ち込んで、アレンジメントの在庫確認をし始めるとカランカランとドアベルがなった。
「いらっしゃいませー」
ん?どこかで……あっ!