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「悪い、今日も帰れそうにない」

「…あ、うん、わかった」

「じゃあ、また連絡するな」


そう言ってシリウスの守護霊は消えた。もう見られてないから、泣いても良いよね。2人掛けのソファーに座った途端視界が歪む、シリウスの守護霊がいたところにはいつまでも残像が残っているみたいでもっと悲しくなってくる。私の目、おかしいんじゃないかな?目を閉じてもシリウスの守護霊がいるみたいに見えるんだ、そう願っているだけなのかもしれないけど。

私が魔法使いを信じていたのは小さな頃で、もう居たら恐怖、ってところまで育ってからシリウスと出会った。別に初めてシリウスを認識したのは魔法使いとしてじゃない。私のバイト先にシリウスがやってきたのが最初だ。小さなカフェで働いていて、丁度レジをやっていたところにシリウスが勘定に来た。シリウスは私が見たこともないお金を出してきて不思議そうにそれを見つめると焦ったように「親友の息子の遊び道具なんだ!」とかなんとか言って必死に私が見慣れたお金をテーブルの上に置いた。ものすごくハンサムな人なのに可愛いなぁと思ったのが第一印象。そのあとちょくちょく来るようになって、ちょくちょく話すことになって、いつの間にかずるずるとシリウスに惹かれていった。まぁ後悔はしていない。けれどシリウスは頑張った方だと思う。全然ぼろを出そうとしなかった。私がシリウスのフラットに行くまで、私はシリウスが魔法使いだなんて知らなかった。最初はびっくりしたし、精神科を真剣に薦めようとしたけど、シリウスの普段の言動から判断すると納得できた。でもシリウスが事あるごとに使う魔法は私にとっては最初は信じがたいものだったけど、今ではそんなことはない。慣れって怖い。そんなシリウスと私が会うのは少し面倒だ。電話は怖いから、と言って連絡ツールはシリウスが魔法で守護霊を作って(?)送ってくれるだけ。私から連絡しようとしても無理。一応すきだとも言われたし、キスだってしたけど、イギリス人であるシリウスにとっては大したことじゃないのかもしれないし。私ってシリウスの頭の中で何パーセントくらいなのかな?今まであった変な事件も、最近増えてる変な事故も、実は魔法使いが関係してるんじゃないかと思いはじめた私には、シリウスが最近の事故に巻き込まれているように見えてならない。「実は俺が犯人でした」といつか私に言うのかな?言わないと思う、シリウスはきっと告げる価値が私にはないと思ってる。そうじゃなきゃ、私にもっと会いに来てくれるはず。鼻の奥がつん、となって視界がまた歪み出す。海の中で目を開けたときよりも何も見えない。シリウス、会いたいよ。シリウスの頭の中で私が数パーセントしか占めてなくても、私の頭の中ではシリウスが他のところまで侵略しているのに。




いつの間にか寝ていたらしい。記憶がないし、明るいのに電気が着いてるし。明るい外を見るだけで目が痛くなる、泣いちゃったから痛みも倍増。溜息をついて起き上がると自分の身体から何かが滑り落ちる。何、これ。見たことない布、服?時代遅れだよ、これ。中世っていうか近代っていうか、少なくとも現代じゃない。手に取ると見た目通りのしっかりした布で、ふわりと嗅ぎ慣れたにおい。……もしかして、慌てて周りを見渡すと、1人掛けのソファーで狭そうに眠ってる人がいる。


「シ、リウス」


口から出た声は何とも情けなくて、まるで親を探す子供みたいな声だ。シャツとズボン以外は何も身に纏っていないシリウスは寒そうで、多分着ていた服(?)を私に掛けてくれたんだろう。近付いて覗き込むと、微かに開いた口のせいか子供みたいな寝顔だ。そっと頬に触れると眉を顰めて目を覚ます。今日が始まって、一番最初に認識してくれて嬉しいなんて思ってしまう、独占欲が強い私。


「起こした?」

「……ああ」

「そんな格好で寝てたら風邪ひくよ」

「いや、もう起きる」

「そう」

「……泣いてたのか?」

「どうして?」

「目が腫れてる」


冷たいシリウスの指先が私の瞼に触れる。寝てたくせに冷たいなんて、やっぱり冷えちゃってるんじゃない。シリウスが私の顔を撫でていく。その手の動きを止めないのは、シリウスが私の変化に気付いてくれたのが嬉しいから、シリウスが私に触れてくれて嬉しいから。また、涙が溢れそう。


「どうして泣いたんだ?」

「べつに何も」

「嘘をつく女は嫌いだ」

「……寂しくて」

「は?」

「シリウ、スが、いない、のが、寂、しくて」

「…………」

「重、い女も、嫌い、でしょ?」

「ああ」

「……っ」

「でも名前は嫌いにならない」

「……え?」

「だから泣くなら、俺の前で泣け」


ぼろりと涙が私の目から零れて、シリウスのシャツを濡らす。私はごめん、と声にならない声で謝りながら染みを擦る。シリウスはやめろ、と言いながら私の手を取りキスをする。


「シリウス、」

「ん?」

「す、き」

「……俺も」


その言葉だけで、そのキスだけで、もう充分なの。




あんさま、リクエストありがとうございました!あんさまから温かいお言葉を頂けるなんて、とても嬉しいです。c-a-b with xxxx、お待たせしていて申し訳ございません……!待っていてください、絶対書きますので!さて、シリウスの切甘とのことでしたが、いかがでしたでしょうか?これからもよろしくお願いいたします。