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- ナノ -

「ルーピン先生!」

「名前か。どうしたんだい?」

「あの、これ……」

「ああ、セブルスからの――」

「違うんです、その、わたしが作ったんです」

「名前が?」

「……はい。あ、あの、迷惑でしたか?」

「全然迷惑じゃないよ。凄いな、私には到底出来そうにない、脱狼薬を作るなんて」

「あ、でも、スネイプ先生に手伝って貰って、やっと作れたんです」

「名前は魔法薬学が得意なんだね」

「まぁ、あの、闇の魔術に対する防衛術よりは……」

「ははっ、私の教え方が悪かったかな」

「そんなことは絶対ないです!ルーピン先生の授業はすごく楽しかったし、今でも教えてもらいたいです!」

「ありがとう、名前」


ああ、もう聞きたくない。物に当たりたいのは山山だったが、以前モリーやリーマスに白い目で見られたからやめておく。足早に食堂から抜け出して溜息を1つ。本当に大人気ない男らしい、俺は。扉の陰からこそりと彼等を窺う。名前は顔を赤らめてリーマスを見ている、リーマスの顔は向こうを向いていて背中しか見えないが。ずきん、と胸の奥が痛む。大人気ないどころか、ただの餓鬼じゃないか。


「シリウス?」

「うお……っ!……あ、ああ、ハリー」

「何を見てるの?」

「何でもないさ、向こうへ行こう」

「あの、僕、喉が渇いちゃったから来たんだ」

「そ、そうか。じゃあ飲んでくるといい、存分に」

「うん、そうするよ」


にっこり笑ってハリーは食堂に入って行った。中から彼等に話し掛けているハリーの声が聞こえてきた。……気付かれただろうか、彼等を俺が見ていたことに。こんな情けない姿を誰にも、特に子供達には知られたくない。これ以上墓穴を掘らないためにはここから離れた方が良さそうだ。中から聞こえてくる楽しげな笑い声に、自分の気持ちがどんどん塞いでいくのが自分でも分かる。

誰もいないことを確認し、壁に寄り掛かって溜息をまた1つ。脳裏に浮かぶのは彼女の、名前のことだ。あんな顔、見たことがない。リーマスに頭を撫でられて嬉しそうに笑ったりする姿を見たのは一度だけじゃない、俺にはそんな素振りを見せたことがない癖に。むしろ、俺は嫌われてるんじゃないのか?名前が俺に話し掛けて来るときは大抵食事の準備が出来たときくらいだ。それも、笑顔も何もなく淡々としている。だからこっちも素っ気無い感じになってしまう。つまりは進展もない、まぁ親子ほどの歳の差だから進展があっても驚きなのだが。……なのに、俺はどうやら名前がすきらしい。ロリータコンプレックスの気があるとは思わなかったのに、彼女に対して抱く気持ちは正しく恋だ。ああ、何で俺はこんなに、


「ブラックさん?」

「うお……っ!」

「えっ!?」

「あ、わ、悪い。驚かせたな、名前」

「……いえ、大丈夫です」

「あー、ああ、そうか。なら、良いんだが。で、えーっと、何か?」

「食事の準備が整いましたので」

「分かった、すぐ行く」


ペこりと頭を下げて名前は歩き出す。やっぱり素っ気ない、また気分が沈んでいく。俺は嫌われているらしい、何故嫌われているのかは分からないが。何かしたか?記憶を辿っても、そもそも関わりもないのだから原因がわからない。階段の真ん中で名前が立ち止まる、その後ろで俺も止まる。


「ブ、ブラックさん」

「え?」

「あの、その、わたし、脱狼薬を作れたんです」

「あー、ああ。知ってる」

「すごく難しくて、でも、作りたかったんです、自分の手で。……ルーピン先生には3年生の頃からすごくお世話になってて、お礼も兼ねて作りたかったんですけど――」

「悪い。それはリーマス本人に言ってくれないか?」

「……え?」

「私には関係のない話だろう」


ただの八つ当たりだ、俺の態度は。名前の口からリーマスのことを聞きたくないが為に、俺は彼女に辛く当たっている。自分でも分かってしまうほどあからさまだ。彼女の顔を見ると、涙で一杯の目が見える。俺が、泣かせたんだ。子供な俺は焦る、何も言えない。子供相手に何をしてるんだ、俺は。


「いや、その、ルーピン先生には、もう、言いました」

「そ、そうか」

「……でも、わたしは、あの、ブラックさんに、最後まで聞いてもらいたくて」

「………ああ、分かった。聞くよ」

「ルーピン先生のため、でもあるんです。でも、本当は、わたし自身のためっていうか……」

「そうなのか?」

「は、はい。えっと、その、わたし、ブラックさんに認めてもらいたくて」

「……は?」

「わ、わたし、すごく子供だし……ブラックさんに少しでも認めてもらうには、得意なことを、更に伸ばそうと思って……」

「えー、あー……何で?」

「……わ、わ、わたしが、ブラックさんを、す、すきだからです」


かぁっという音をたてるかのように名前の頬が赤くなるのに釣られて俺の頬も赤くなる。彼女は手で顔を覆い、ぼそぼそと話し始める。あまりにも小さな声で話すから聞き取りづらかったが、要は彼女は恥ずかしくてすきな人には素っ気なくしてしまうらしい。胸がどくんと疼く。ああ、もう俺はどれだけ子供なんだ。俺のよりも随分低い位置にある頭を自分の胸に抱き寄せる。そろそろと回ってきた腕に、さらに心臓が活発化する。……俺が子供なせいもあるかもしれないが、名前が可愛すぎるのがいけないと思う。ロリータコンプレックスでも構わない、名前が俺の腕の中にいるなら。




ミユさま、リクエストありがとうございました!大人シリウス×ハリーの親友ヒロインとのことでしたが、いかがでしたでしょうか?私には思い付かないほどの斬新なリクエストでした。お気に召されたら嬉しいです。これからもよろしくお願いいたします。