×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -

久々に晴れ上がった空。なのに暑くはなくて快適な温度。ごろりと草むらにねっころがると、青臭い匂いがした。うん、いい天気だ。思わず頬が緩む。だって、最近雨ばっかりだったし。雨の後の空って綺麗だなぁ。指先で土に触るとまだ湿っていた。これは嫌かも。リリーもメアリも授業で、ホグワーツ全体がものすごく静かだ。いつもは騒がしいくらいだからちょっと落ち着かない気もするけど、こういう時間も好きだったりする。そろそろテストだし、そうじゃなくても勉強しなきゃいけないんだけど、あんまりやる気が出ない。だってこんなにいい天気なのに、ゆっくりしなきゃ損だと思う。


「名字?」

「……え?」


陰が差し掛かって逆光で誰だか顔はわからない。でも声でわかる、ブラックだ。太陽がブラックの後ろから差し込んでいるからなのかわからないけど、ブラックの髪はきらきら輝いて眩しい。……ていうか、何でここにいるんだろう?ここ、結構穴場だったのになぁ。むくりと起き上がって、ブラックに向き直る。背中が若干湿っていて気持ち悪い。


「何してるんだ?」

「そっちこそ」

「俺は授業が休みで、暇だから廊下を歩いてたら名字が……あ、」

「ここ、廊下からじゃ見えなくない?」

「いや、その……」

「ブラックってすごく目が良いんだね」


ぽかんとした顔をしているブラックに首を傾げる。何でそんな顔をしてるんだろう?私、変なこと言ったかな?ブラックはがさがさと音をたてて何かを隠し始める。気づかれないように盗み見ると羊皮紙の切れ端みたいだ。……何だろう、今の。でも隠すくらいだから気にしちゃだめだよね、うん。


「ポッターたちは?」

「あ、ああ、あいつらなら授業中だ」

「ふーん。どこかで遊んでるのかと思った」

「ピーターとリーマスがそんなことをするはずがないだろ」

「まぁね。……ポッターはする可能性があるんだ」

「……エバンズがいればしないんじゃないか?」

「確かに」


いつの間にか隣にブラックが座っていて、ちょっと驚いた。だって、すごく自然だったから。違和感なんて全くない、最初からそこにいたみたいに。風がそよそよ吹く音と、湖で大王イカが足をばたつかせてる音しか聞こえない。ブラックは確実にそこにいるのに、緊張も全然しないしむしろ安心するくらいだ。あ、そっか。ブラックって、


「空気……?」

「は?」

「あ、ごめん。なんでもない」

「意味がわからない。何でいきなり空気なんて言うんだよ」

「き、気にしないで」


い、言えない……!空気なんてある意味失礼すぎる。ブラックだって気を悪くするに決まってる。まだ疑問たっぷりありますっていう顔のブラックから慌てて目を逸らして空を見上げる。……綺麗だなぁ。吸い込まれそう。手を伸ばしたくなるけど、隣にいるブラックにこれ以上不審がられたくない。


「空、綺麗だな」


隣を向くと、ブラックはねっころがって空に向かって手を伸ばしていた。思わず私もねっころがって空に手を伸ばす。同じこと、思っていたんだ。なんだかおかしくて口角が上がっちゃう。「何だよ」と尋ねるブラックの声を無視して、そのまま目を閉じた。



(名前!起きなさい!)
(……へ?)
(こんなところで寝てたら風邪をひくわよ)
(な、え?リリー…?)
(何よ、どうかしたの?)(どうしてここに……)
(だってもう授業は終わったのよ)
(えぇ!?な、うそ!)
(本当よ)
(うわー…やっちゃった)
(大丈夫よ。まだ名前の授業はないわ)
(本当!?良かった……。あれ、ブラックは?)
(知らないわ。一緒にいたの?)
(うん……)
(あら、これって名前のローブ?)
(ううん、違う。……あ、ブラックのだ)
(早く返してあげた方が良いわ。今から行く?次の授業は一緒でしょう?)
(うん、行こう)





新堂さま、リクエストありがとうございました。そのときまでのほのぼの夢、とのことでしたが、ご希望に沿えたでしょうか?そういえばほのぼのって最近書いていないかも、と初心に返らさせていただく良い機会になりました。これからもよろしくお願いいたします。