愛を囁け、恋を論ぜよ


「ねえ国見」

「…はい?」

「恋ってなんだと思う?」

ドリンクを飲みながら体育館の壁に寄りかかる国見に話しかけた。
休憩時間だとはいえ、なんてことを訊いてくるのかと思われたかもしれない。
けど国見は表情ひとつ変えることはなかった。

「…それ、俺に訊くんですか」

「ほ、ほら、国見ってそういうのに興味なさそうだからどうなのかなーって」

「まあ……そうですね、気の迷い…とか?」

「気の迷いかぁ」

じゃあ私のこの気持ちは一種の気の迷いなのかな。
国見にはその気の迷いだと思うような相手はいるんだろうか。
無駄に整った横顔からは、相変わらず何も読み取れなかった。

「もしさ、国見が気の迷いを持ったとして、それをどう伝える?」

「…なんですかそれ」

「だから、なんて告白するかってこと!」

「あぁ。
…………………………好きです……とか」

国見が!好きって言った!
もちろん私に向かってじゃないのはわかってる。なのに小さな心臓は大きく高鳴っていた。
単純な私の脳内はいいように国見の言葉を変換した。

ああ、私、国見が好き。
気の迷いなんかじゃなくて、国見が好き。
溢れて止まらない。

「わ……たし、も、すき」

「………は?」

あれっ!?私何を口走った!?
国見はそんなつもり全くなかったのに。私に言わされたようなものなのに。

「な、なんでもない!ほら、もう休憩終わるよ!」

逃げ出すようにコートに戻ろうとする私の手が後ろに引かれた。

「く、にみ……?」

真っ直ぐ私を見る瞳は、やっぱり何を考えてるのかわからなくて。

「……俺も好きですけど、苗字先輩」

「へっ!?…いやでも、国見は気の迷い…でしょ?」

「別に………気の迷いって悪いことばかりじゃないですし」

ちょっと視線を外した国見は、コート上では絶対に見せない私の知らない顔をした。


お題『愛を囁け、恋を論ぜよ』



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