もう一度言おうか?
「す、…すー…きだ」
「……ん?何?影山」
「好、きだ」
「…え、何が?」
「っ!!バレーがに決まってんだろボケェ!」
そう言い捨てると、ボールを抱えて去っていく影山。
いったいなんなの?なんの宣言?
ていうかバレーが好きなことくらい知ってるから。
バレー馬鹿だから、あんた。
正直びっくりした。
私に好きだって言ったのかと思った。
そんなわけない。影山の頭の中はバレーばっかりで、私の入る隙間なんてない。
勘違いしちゃいけない。所詮ぬか喜びに終わるのは目に見えてる。
私は影山のそばで、影山の大好きなバレーを支えていければそれでいい。
▼▼▼
クソ!あんのボケェ!
「どうだった……って訊くまでもないか」
俺の前で苦笑いする菅原さん。表情で察したらしい。
「ちゃんと言えたのか?」
「言いましたよ!」
「なんて?」
「………好きだ、って」
「おーおーやるじゃん。でもなんでそんな顔になってんだよ」
「バレーが………」
「…はあ?まさかとは思うけど…バレーが好きって言ったのか?」
「アイツが鈍感すぎなんすよ!」
ギリギリと拳を握り締めてると、菅原さんが「おまえもなー」と突っ込んだ。
「ほら、もう1回ちゃんと言ってこいよ」
菅原さんが後押しするように俺の背中を叩いた。
体育館に戻って元々鋭い目を細め、再び苗字の姿を捕らえる。
コート外で手際よく部活の準備を進めていた。
「おい」
苗字の背後から声をかける。俺の目の前でしゃがんでいた苗字は首だけで振り返った。
「んー?」
「好きだ」
苗字の手の動きが一瞬止まる。けどそれは本当に一瞬で、首を戻してまた動き出す。
「はいはい、知ってるよー。バレーが好きなんだねぇ影山くんはー」
「ちゃんと聞けって!」
「しつこいなぁ。もうわかったってば」
「わかってねぇ!」
わかってねぇんだよ。まだ言ってねぇんだから。
俺は苗字の正面にまわる。
「好きだ。
………その、苗字、が」
クソ、なんでこんな恥ずかしい思いしなきゃなんねぇんだよ。
けど俺の目の前にいる奴は、真っ赤な顔しながら尻餅ついたような体勢で俺を見上げていた。
その間抜けヅラが見れんなら、
お題『もう一度言おうか?』