二人だけの秘密
(注)ヒロイン語りで東堂くん喋りません。名前変換なし
何故、私はここにいるのだろう
ここにいることを望んでいないのに。
20歳になって初めて飲み会というものに誘われた。本当は来るつもりなんてなかったのだ。元来の人見知りの私はたくさんの人の前に出ると泣いてしまうほどで、こんな人間が飲み会なんて不向きだ。
考えている間に友人に手を引かれ、座らされる。みんなはもうすでに飲み始めていて、私は一番端に移動して膝の上で手を握り、震える体を抑える。
だっていくら見渡しても人、人、人。周りを意識すればするほど震えがひどくなり、呼吸が荒くなる気がした。
目をぎゅっと瞑り、みんなはじゃがいも、じゃがいも……と聞こえない程度に呪文の様に呟く。
……あ、やばい。もうっ……!
『!?』
もう無理だと思ったその瞬間、そっと誰かの手が重なり、ゆっくりと絡めとられる。少しだけ高い体温が心地よくて、あんなにひどかった震えが止まった。誰なんだろうと、そっと目を開いて恐る恐る顔をあげて、相手を確認する。その人物に驚きを感じてしまった。
『……東…堂…くん……?』
彼は、絡めてない方の手の人差し指を唇に近づけてしーっと言う。
そして、私に柔らかく笑った。まるで「大丈夫だよ。落ち着いて。」と言われているようだった。
彼が何故私の隣にいるのか、手を繋いでくれたのか。私の異常に気づいたのか。ぐるぐると余計な考えが巡る。
どんな理由にせよ、机の下で繋がれた手は二人だけの秘密だということだ。
End