「よぉシルディアじゃねえか!今日も不景気な面してんなぁ」
「お前はいつも脳内が好景気にわいていて羨ましい限りですよシャルルカン」
「いやー、そんな褒めんなって!」

嫌味だよ、気付けよ。心中で毒づきながら、目の前の男を見た。八人将の1人、シャルルカンだ。
本当ならば王の傍らに立つ八人将である彼を呼び捨てになど出来ないのだが、呼ばれている当人も気にしていないようなので良いだろう。何よりその露出の高い健康っぷりが憎らしいから、死んでも敬称など付けてやるものか。

「お前が書庫に来るなんて珍しいこともあるものです。謝肉宴も近そうですね」
「何で俺が書庫に来ると南海生物の襲撃があんだよ…」
「言葉のあやですよ。人語が理解できないとは、本当にお前は人ですか?類人猿あたりでふと振り返って猿に立ち戻った存在では?」

私が書物を抱え直しながら言うと、シャルルカンは苦々しげな顔で私の額を指で弾いた。いきなりのことだったので、頭ががくんっと後ろに倒れる。

「ちょっおまっ…首据わってねぇの!?赤ん坊か!」

それを見たシャルルカンが慌てた様子で私の頭をもとの位置に戻した。突っ込みを入れる前に謝れ。
そもそも指に対して注意が向いていれば、私とてこんなに頭部がぐわんぐわんすることも無かったのだ。

「お前がいきなり弾くからです、馬鹿者!私はちょっと首に筋力がないだけで、ちゃんと力を入れていればこれくらい…」
「それ据わってるって言えんの!?…うっわぁ俺お前の筋肉のなさ舐めてたわ」

赤ちゃん!?赤ちゃんなのかお前!?と私の体をべたべた触りだすシャルルカンが、いい加減鬱陶しくなってきた。

「シャルルカン、暇ならちょっと手伝いなさい。ちょうど書物が重いなと思っていたところですから」

言われて、シャルルカンが素直に私から書物を受け取る。その目が「重いのか?しょうがねぇな、兄ちゃんが持ってやるよ」というような、幼子に対する色を孕んでいたのは気のせいだと思いたい。

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