(ちょっと性的な予感)





とろりと、意識が融ける。
僕はおぼつかない思考でそう考えた。言い知れぬ恐ろしさを覚えて、力の入らない脚が知らず知らずのうちに敷布を掻く。部屋に差し込む月光が、いやに眩しい。
寝台に横たわる僕の隣では、素肌に夜着を羽織った紅炎様が何やら油紙を弄っていた。薬の時間だろうか。ぼんやりと思う。彼は僕を抱いた後、よくこうして薬を飲ませる。何の薬かは知らない。ただ、継続的に飲むのが良いのだと教えられたのみだ。

「リア」

やがて、彼は僕の名を呼んで抱き起こす。それでも身体に力を入れることが出来ず、彼の腕に抱えられなかった腕がだらりと寝台の上に落ちた。

(くらくら、する)

ともすれば遠のく意識を必死で手繰り寄せて、僕は何とか紅炎様の顔に焦点を合わせた。紅炎様はただただ静かな目で僕を見ている。
す、と音もなく、彼の武骨な指が僕の唇に油紙を近づけた。僕は少し嫌だなぁなどと思いながらも、薄く唇を開ける。この薬は苦いのだ。あまり好きではない。
さらり、苦い粉が僕の咥内を侵す。噎せそうになったが、そうすると紅炎様のご不興を買ってしまうので必死に我慢した。
紅炎様は寝台の傍に設えられた水差しから一口、水を含む。そうして迷いもなく、彼は僕の唇に自分のそれを合わせた。

「……ん、ぅ」

流れ込む温い水が、咥内の粉を溶かして喉奥に落ちて来る。僕はそれを必死に嚥下した。口の端から飲みきれなかった水がこぼれる。僕の脚がまた無意味に敷布を掻いた。
水を飲みきると、今度は紅炎様の舌が唇を割って入ってくる。熱くぬめる舌が僕の咥内を蹂躙して、中に薬が残っていないことを確認してから出ていく。ちゅぷ、と淫猥な音をたてて、唇が離れた。
僕の肺が酸素を求めて大きく喘ぐ。ただでさえ思考をはらはらと零す脳が、酸素不足で更に働かなくなっていた。ふるふると揺れる指先が、紅炎様の夜着の裾を掴む。
それを見た紅炎様はふっと獰猛に笑って、僕を寝台に沈めた。

「こう、え…さま」

回らない舌で彼の名を呼ぶが、彼は答えない。
僕は彼のがっしりとした体が自分に圧し掛かってくるのを感じながら、そっと考えることを放棄した。



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