大罪ぱろ | ナノ



greed



強欲





「留んちってご飯無いよな」
「来て早々何なんだお前は」
「宝石?なにそれ喰えるの?」
「ホント何なんだお前は」

 呆れ顔の食満に対しながら、ベルゼブルは残念そうな顔をしている。勝手に来ておいて無礼この上ないが、悪魔とは元来無礼なものである。
 宝石や金銀の山がそこかしこにそびえる食満の屋敷で、ベルゼブルはまた腹を空かせていた。いくら食ったところで満たされないのは大食の悪魔の業である。

「何しに来たんだよ、帰れよ」
「今私はプチ家出中だ。鉢屋がモロク豚の丸焼きを用意したら帰ってやらんことも無い」
「そんなん俺が知るか。ドーナツやるから帰れ」

 食満が差し出した袋詰めのドーナツを音速で奪って貪りながら、ベルゼブルはしかしそこから動く気配は無い。まだじっと食満を見ている。顔を顰めた食満が何だよ、と聞くと、ベルゼブルはもっちゃもっちゃとドーナツを貪りながら言った。

「もっと」
「お前喰いながら話すなよ…行儀悪ぃな…」
「まだ持ってんだろ、寄越せよ」
「ふざけんな、これは後輩の分だよ」
「寄越せよ」

 話が通じない。食い物の絡んだベルゼブルは、七松を彷彿とさせる。食満は呆れながら手でベルゼブルを追い払う仕草を見せた。

「とにかくお前にやる分はもう無い。さっさと帰れ」
「モロク豚の丸焼き」
「ねぇよ。モロク豚があったとしてもうちにはそんなデケェ竈ねぇよ」
「この役立たずが!!」

 ベルゼブルは罵声とともにドーナツのカスを食満にぶちまけて、半透明の翅を広げて飛び去っていった。残されたどうしようもない怒りを抱えながら顔にこびり付くドーナツのカスを拭った。今度あいつの屋敷に小平太けしかけてやる、そう心に決めながら。



   
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