彼女の嫌悪



「おはよう、みぃちゃん。夜泣きしなかった?偉いね」
「えへへ、そうかなぁ?」

 何だかよくわかんない6年生が私の頭を撫でる。
 気持ち悪い、触んないでよ!大体私みぃちゃんじゃないし!郡山 愛にみぃちゃんなんて、かすってもないじゃない!気持ち悪いキモチワルイ!このキ●ガイ!
内心で唾を吐きながら、でも顔だけは笑顔で保った。なんせ、そいつの隣には。

「…柊、天女さまはもう赤子ではないんだぞ。夜泣きなどしないに決まっている」

 愛しの仙様がいるんだもの!あぁ、苦々しい顔をしても素敵!私が困ってるのに気付いて、こいつをたしなめてくれたのね!流石私の仙様。以心伝心ってやつかしら。だって私と仙様は運命の2人なんだもの!

「嫌だった?ごめんね、みぃちゃん」
「そんなことないよ?誉められるとうれしいもん!」

 何故かそいつは、いつも仙様の傍にいる。きっと仙様にまとわりついて、仙様は仕方なく一緒にいてやってるに違いないんだわ。だから私も嫌でたまらないけど我慢してあげるの。だって仙様のためですもの!

「みぃちゃんはちゃんと晩ご飯食べた?」
「それがまだなの…今日は1日事務のお手伝いをしてて……」
「そうなの?みぃちゃんはちゃんとお手伝いもできて良い子だね」

 まあ、ほとんど小松田さんに押し付けちゃったんだけど。あの人って文句言わないからホンット便利!

「柊、もう良いだろう。天女さまもお困りでいらっしゃる」
「そうだ、これから3人で晩ご飯食べよう?今日は焼き魚だって小平太が言ってたんだ、楽しみだね」

 は!?意味わかんない、何でアンタも入るわけ?普通私と仙様が一緒に食べるでしょ、どう考えてもアンタなんか要らないわよ!
 そんな考えを隠して、私はそうだねっと笑う。あーホントやだ。どっか行ってくんないかなこのキ●ガイ。
 そうして勝手に私の手を掴んで食堂に歩き出すそいつを、仙様は慌てたように呼んだ。ほら、やっぱり仙様もアンタのこと邪魔だって思ってんのよ。それでも鼻歌を歌いながら食堂まで私を連れてきたそいつは、カウンターのおばちゃんに向かってにこにこ笑いながら挨拶した。何がおかしいわけ。頭イッちゃってんじゃないのこいつ。

「こんばんは、おばちゃん」
「あら柊くんこんばんは。今日は天女さまも一緒なのねぇ」
「今日は仙蔵と3人でご飯なんです。いいでしょう」
「ええ素敵ね。じゃあこれ、焼き魚定食3人分」

 ありがとう、と笑って言ったそいつの次に、むっすりとした仙様が続いてお盆を受け取った。私もおばちゃんからお盆を受け取って、仙様の後を追いかけてテーブルに座る。
 すると、そいつが遠慮なしに私の隣に座ろうとしてきた。じゃあ僕はみぃちゃんの隣ね、とか言って。ちょっとやめてよ、マジで気持ち悪いんだけど!
 すると、仙様がやんわりとそいつを止めてくれた。

「柊、私が天女さまの隣に座ろう。向い合わせの方が、天女様と会話しやすいだろう?」
「……そうかな?」

 そう言って少し不満そうに移動したそいつのあとに、仙様が座ってきた。やだ、やっぱり仙様も私の隣に座りたかったのね!それをあんな理由付けて、仙様ったら素直になれないんだから!

「みぃちゃん、お魚は好き?」
「うん、好きだよっ!」

 あとはこいつが居なきゃ完璧なのに!ホントまじで消えてよ!



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