* 5話

「さて、文化祭の練習を行う。今回は新メンバーの桜井夢叶が加わる」
「よっ、よろしくお願いします!!」
 先輩ばかりのこの場所に、たった1人下級生がいる。夢叶は顔が紅潮していくのが分かる。
「その前に、ベースの腕前見せてくれる?」
「へ?!…あ、はいっ!!」
 ケースからベースを取り出し、ピックを持って、由姫に教えてもらったように音を奏でた。試験以上に緊張する。
「…っ」



「…なかなかじゃないの?」
「そうだねー。普通に上手い」
「ありがとうございますっ!!」
 とにかく先輩に褒めてもらってほっとした。だが、そのあとの言葉に愕然とする。
「ただし、このレベルで文化祭に出てもらっちゃ困るわ」
「…っっ…そ、そうですよね」
 作り笑いをした。本当は泣きそうで泣きそうだったが。
 ──飛鳥さんと志藤さんが優しいのは嬉しいけど、ほかのクラスの先輩が厳しくて、本当についていけるかが心配。
「まあ、桜井さんは4年生ですし。あなたたち6年生とランクが違うのはご容赦してるのでは?」
 ふ、と透明感のある声が生徒会室に響き渡った。生徒会長、飛鳥の声だった。
「そ、そうですね!この子が4年生だと忘れてました」
「…で、も…」
「甘やかさないけど、厳しくもしないわ。だから自分のペースで上達させて!」
「……あの…」
 この人格の変貌。ぎょっとするしか、反応はできなかった。生徒会ってこういう人の集まりだったのだろうか。



「は〜」
 重い足取りで生徒会室を出た。
「あの!!」
「…はい?私ですか?」
「うん。君」
 見たことのない顔。でもSランクのバッヂを付けてるから、生徒会なのだろう。
「ドラムスクラスの委員長、君島聖陽です」
「……で、どうしたんですか?」
「君が好きです」
 1秒ほど、世界が静止し、やっと情報が分かった。けれど、夢叶は首を傾けたまま、「……は?…そういうのお断りですから」
「そうですか?」
「ええ」
「何故です?」
「そういうイキナリなの、嫌なんです。しかも今は男の人に興味がないですし」
 では、と言って由姫のいる音楽室へ向かった。

「スカート捲れてますよ」
「は?!」
 後ろを振り返ると、紺色の……。
「へへへへへへへ、変態っ!!!!!」
 顔を耳まで赤くし、スカートを戻して音楽室まで走って逃げた。


「ホント可愛い子」

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