* 3話

 試験当日、私は緊張で硬直していた。
 大好きなベースを手に取って、控室でずっと座っていた。メイクもせずに。
「ほらほらほら〜夢叶、メイクしないと」
「…里音…」
 ポンポンと、ブラシでファンデーションをつけてくれる。
 何とか顔色は良く見えたが、グロス、チーク、アイシャドウなどをしなくてはならない。
「…ドレスが黒だから、ピンクにするか」
「…ん、ありがと」
「元気ないけど、大丈夫?」
「え?!あ…緊張してるだけ」
 そうか?と言って、チークをつける。
本当は、由姫がいないと、自信がないから。また、BUで、不合格になって、空真さまに笑われるだけだと夢叶は思っていた。
 もしも不合格になったら、由姫に迷惑かけたんだ。
 ──ごめんね…。不合格になっても、怒らないでね。
「夢叶が合格したら、また……」
「桜井夢叶さんお願いしまーす!!」
 場違いの大声に夢叶はぎょっとした。
「……で、何?」
「いや、いいよ。行きな」
 いつの間にかメイクは完成していた。ベースを持って、試験会場に行った。
「…っと、ナンバー27番、桜井夢叶です。お願いします」
 勿論、委員長の空真さまがいた。緊張で手が震えそうだったけど、そのまま指を弦にかけ、由姫に教えてもらった通りにベースを弾いた。



「……ありがとうございました」
 一礼した後、とっさに会場を出た。ちゃんとできたかは心配だけど、何か解放感が得られた。





「27番、桜井夢叶…?」
「この子がBUクラスだったなんて…」
「アイツは、ただ申請書を出し忘れたってだけで不合格だったんですよ。まるでテストで名前を書かなくて0点になった小学生のようだ」
「幾ら才能があっても、そりゃあ困るなあ」
「…じゃあ、いくら昇格させましょうか」



 合格発表は試験の翌日に、掲示板に貼りだされた。
 いつも以上にドキドキしていて、由姫と一緒に見に行こうといった。
 昨日は、ギタークラスとベースクラス、ドラムスクラスのみが試験をしたため、その発表しかされていない。
 ベースクラス合格者…。Sクラスに昇格………。?!
 何故か、Sクラスの欄に「桜井夢叶」と書かれている。
「夢叶!生徒会の一員になってるわよ!!」
「…う、うん……由姫、頬叩いて」
「え?」
 ばちんっ、と鈍い音を鳴らして、頬を叩いた。夢ではないようだ。
 ──じゃあ?私は、本当にSクラスになってしまったんだろうか?
「その通りだ」
「「「「きゃあああああああああっ!!!空真さまあああああああああっ!!!」」」」
 掲示板の女性ギャラリーが一斉に歓声を上げる。
「…空真さま」
「この前の試験はグダグダだし、申請書も出さなかったから上がらなかっただけだが、今回は良かったと思うが。審査員からも結構な支持があったからSクラスに上がっただけ。悪くないだろう?」
「…あ、…ありがとうございますっ!!」
「よかったわね。桜井夢叶さん」
 生徒会長の頼音さまにも祝いの言葉をもらった。
 ──けれど、私は…生徒会として続いていけるの?!

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