* 1話

 第3音楽室から聞こえる、ベースとギターの音。きっとアンプにつながっている。
中にいるのは、女性2人。ロングヘアの子がギター、ショートヘアの子がベースをしている。
 ロングヘアの子の襟は見えないが、ショートヘアの子の襟を見て…BUクラスの者だと考えられた。
「え?」
 そう思ってると、此方を向いた。器用にベースを弾きながら。
 ヤバい。見られたかもしれない。そう思い、僕はとっさに逃げた。
「夢叶ってなんでこんなにベース上手いのに、BUからあがれないんだろうねー」
「きっと才能がないからよ」
「そんなものかなー?夢叶はライブハウスのライブでも結構な評価もらえたんでしょ…」
「そだよ。それがどうした?」
「…いいわ。これ以上言わない。さあ、練習続けましょ」
 確かに、基本は出来てると思う。夢叶も、先にBTに上がった由姫をみて、焦っている。
 ──何が足りないの?ねえ教えて教えて教えて教えて教えて教えて教えて教えて教えて。
「うわっ…」
 そう思いながら歩いていると、壁にぶつかった。せっかく書いた楽譜をぶちまける。尻餅をついたため、すぐには起き上がれなかった。
「これで全部?」
「へ?」
 いつの間にか、ぶちまけた楽譜が整っている。揃いも完璧だ。
「……BUの子か」
「へ?」
 ふ、と笑って場を去った男子生徒を見て、夢叶はボー然と立ち尽くすばかりだった。時間がフリーズした気さえした。くしゃりとなる髪を見て、フリーズしてないとホッとなる。
 ──ホントに実力ないから、私笑われるんだろうな。
 ため息を一つついて、目的地まで歩こうとした。
「ゆーめかー!」
「あ、っごめんっ」
 由姫に呼ばれ、ハッとした。由姫のところへ走り、そのまま一緒に歩いた。
 由姫はBTの中でもまた優秀。1ヶ月後の進級試験で合格すればAUに上がれるという。夢叶はどんなに頑張っても、所詮ベース。すぐに上がることなんかできず、上がったとしても最高BT。
「夢叶……」
「作曲もダメダメらしいよ。通りかかった男子生徒に鼻で笑われたしっ」
「…BUでは結構な作曲してると思うんだけど…、あんた提出物は出してるわよね」
「うん」
「…じゃあ、何?何が足らない?」
 出席日数は保ててる。授業態度もいいらしい。提出物も出してる。ベースではライブハウスでいい結果がでてる。確かにこれくらいあれば、1クラスくらい昇格できそうだが…。
「あんた…、生徒会の志藤空真さまと話しした?」
「……志藤さん…?誰…?」
 ここだったのか。
 志藤空真。ベースクラス委員長。ランク昇格のためには、この人に一言言ってから試験を受けなくては意味がない。
 ──だから、試験を受けても受けても上がらないんだ…。最初は、元委員長の花村さまに言ったのに…。
「志藤さまに言わなきゃ、上がるものも上がらないわ。…はー。これだったのね…」
「…ううう、じゃあどうすればいいの?」
「試験まであと5日あるから、〆切には充分間に合う。急ぎなさい。私も行くから」
「は、いっ!!絶対次こそはBTに上がるぞ〜〜」
 授業が終わったら、生徒会室に足を運んだ。なんだか、緊張する。
「「失礼します」」
「どなた…?」
 バイオリンクラス委員長兼生徒会長の飛鳥頼音が此方を向く。夢叶と由姫は、背中がぞっとするのが分かった。
「えーと、ベースクラスの志藤空真さまは、いらっしゃいますか?」
「あ、いるわよ。…志藤〜」
 ──どんな人なのか、顔をあわせられないよ。バカな試験受けてたんだか…ら…。
「…さっきのBU」
「ああああああああああああああ!!!!」
 ──授業の前にぶつかった、あの男子生徒…!!
 だんだん蒼白になっていくのが、なんだか分かってきた。
「で、何の用?」
「えっと、次の試験の合格点に入ったら昇格するやつなんですけど」
 さっき持っていた、紙を渡す。必要事項はキチンと入れたから、問題はないだろう。
「…まあいいだろう。受けるだけ受けろ。まーお前みたいなやつは落ちるだろうけどな。言うけど、お前と同じ学年のベースクラスは、お前以外みんなBT以上だからな」
「はうあっ?!」
 ──そういえばそうだった。同じクラスの曜子も、里音も、眞由美も…BTだった…。私のミスでこんなに差がついちゃうなんて…私…負け組だ。
「その星型のバッヂ、1つでももらえるように努力しておけ。以上だ」
「はっ、い、分かりました!!失礼しました!」
 そのまま生徒会室を出た。
 本当に、今度の試験、受かるのだろうか。
「…もう負け組決定…」

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