* 8話

音楽学校のためか、楽器屋はそれほど遠くはなく、歩いて1分ほどの距離にある。大型のホールディンクスが経営している楽器屋というわけで、質はいい。
「あの、ギターとベースのメンテナンスをお願いしたいんですが」
「えっと、どれですか?」
「これと、これです」
ガタンガタン。ギターを置くときの独特な音がなる。
「えっと…あ、大丈夫です。メンテナンスするので少々店内でお待ちください」
番号札を渡され、そのまま店内をじっくりとみる。
レフティモデル、小さ目、入門セットも置いているこの楽器店は幅広い年代に人気。楽器に関するものならなんでも置いていて、声蘭学園の聖地ともいえる。
「あ、夢叶。来てたんだ」
「里音!」
「レフティモデル見てたら止まらなくなっちゃって…」
「よく里音はレフティ弾けるよね」
里音は、レフティモデルのベースを使っている。親に「レアだから」という理由で買われたレフティ。支障がなく、里音は両利きだったので、ちょうどよかった。
「でも、レフティってかっこいいじゃん?!バンドで一人でもいたら華やぐっていうかー!」
「…ありえるけど、小学校のときクラスに3人は左利きいたから…」
「あなたの小学校教えてください」
で、次欲しいのは、夢叶と同じフェンダーのムスタングベース。と里音は言った。
今使ってるベースは、入門セットで買ったもので、この学校に入ったばかりだったため、質落ちしたようだ。
「…私はアンプが欲しいわ。軽量化されたのが出たらしいの」
「由姫の欲しいのってそういうのばっかだよね」
「お小遣いで買おうかな」
「ムリムリ」
じゃあ、私はここのスタジオ借りるからバイバイ、とスタジオの中に消えて行った。
まだメンテナンスは終わってはいないので、オルガンを二人で弾く。
『番号札…』
「あ、私らだよ」
 ちょうど音楽も弾き終ったころだった。さっそく、レジへ急ぐ。
「こちらになりますね」
 置かれたのは、ぴかぴかになった夢叶のベース。弦も綺麗に張られている。
「御代の方、2つ合わせて1万円になります」
「はいはーい」
 一緒に5千円ずつだした。ありがとうございます、と言ってレシートを渡す。ケースにいれて、そのケースを背負った。
「…あとの5千円、何に使う?」
 ちょうど二人には5千円余っていた。うん、何に使おう。と由姫は言う。
「私は…特に楽器ではほしいもの、今はないから貯めておくけれど」
「私も一緒。やっぱりアンプが欲しいんだよね」
 ふふ、と笑って、「じゃあアイスでも食べるか」
「賛成」
 楽器店からも学校からもそう遠くはないアイスクリーム屋さんに、2人で入った。
「あ、桜井さん。あとAUの…三陸さんでしたっけ?」
「あっはい、会長。名前を覚えていただき、光栄で御座います」
 場違いじゃないのだろうか。生徒会長がひとりでトリプルのアイスを食べている。
「会長、アイス、好きなんですか?」
「ええ。今みたいな季節の変わり目に食べてみると美味しいのよ。でもお腹こわしちゃうのよね。トリプルだと」
 うん、冷たい。と一言漏らし、席を取っておくわね、と言ってカバンを置く。
 私たちはダブルのアイスを頼んだ。会長のところへ持っていくと、まだ2つ目の途中だった。
「まだ食べているんですか」
「うん。やっぱり女の子はダブルが限界よねー」
 もう一度、冷たい冷たいと言って、楽しく会長はアイスを食べていた。
 その会長と一緒に話をしながら、アイスを少しずつ平らげて行った。


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