キラキラ夢見る流れ星(シャチ)

真夜中に船を水面に浮上させるのは珍しい。流石に周りは漆黒の闇ではあるし、敵船に見つかりにくいのだが、潜水していた方が安全なのは確かだ。

「流れ星見えるかな?」

「んー?俺目ぇあんま良くないしなー見えっかなー?」

「じゃあ私が頑張って見つけるよ」

シンと静まり返った船尾の一角、姫はシャチと甲板の手摺りを両手で掴み、顔は空を見る。二人は足をパタパタしたり、上半身を左右にフラフラ揺らしたりと、落ち着きは全くないが一応二人きりで星を眺めるというロマンチックな時間を過ごす。

「つうかいきなりだよな姫って…星見るって柄じゃねぇのに」

「何さ、悪口?こんなシチュエーションで悪口ですか?センス疑うようなキャスケット帽被ってるくせに」

「おいそれ悪口じゃん姫、完璧悪口じゃん」

真夜中静まり返った時間なので、流石に大声で言い争う事は出来ないのでボソボソと口喧嘩。姫は肘を使ってシャチの横っ腹に軽く攻撃をするため近付けば何ー?と甘えるようにこちらに身を預けてきた。右半身にシャチの体重がゆっくりかかり、鼻先には香水なんかじゃないシャチ独特の香りが何とも言えない充足感をもたらしてくれる。

「…重っ!暑っ!邪魔!」

「ちょ……姫って完璧なまでに空気壊すよなー」

俺の一生懸命に作った甘い雰囲気返せと膨れるシャチに、姫は何言ってんのと馬鹿にして笑ってみせた。

「っあ!!!」

「へ!?」

「今!見た!?今の流れ星!!あっちにシュン!って!!」

興奮してか声を張り上げる姫に、声落とせと促すが、姫は流れ星が見れた事がよほど嬉しかったのかシャチの両腕を掴み前後に揺さ振りすごいすごいと楽しそうに笑う。

「で、姫は何か願い事したの?」

「………あ…」

「………あーあ、馬鹿姫」

シャチのせいだ!と根も葉も無い八つ当たりを始める姫にため息をつくしかないシャチ。結局星を見たいと言ったのは姫で一緒に見ようと誘ってくれたのも姫。なので一握りの淡い期待はしていたのだが、シャチの望んでいた甘い一時は皆無。

「あーあ!折角願い事用意してたのに!もう!」

「何、おやつが毎日食べられますように?」

「聞いて驚くなよシャチくん!!」

「?」






キラキラ夢見る流れ星




(シャチが私を大好きになってくれますように!)

(………………………………はい!!?)




もうなってるから!これ以上俺を夢中にさせないで下さいよ姫ちゃん!!

…なんて口が裂けても言えないけど!






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