入れ違いと破壊
一方、キッドは姫がハートの海賊団に買われて行ったとは知らず、ロー達が店を出てほんの30分程の入れ違いで、また先程の姫がいた店へと戻った。
「いっ…いら、しゃい…ませ」
明らかに何か動揺する店主を横目に下手くそな絵描きのケースへと近付いた…のだが。
「…………おい」
「っ!!!はい!!!」
小さく、少し怒りの込めた声で店主を呼べば、既に尋常じゃない程の冷や汗と動揺を見せる。
「ここにいたガキはどうした…?」
「も、申し訳ございませんユースタス様!つい先程、買い手が決まり彼女は引き取って行かれました…!」
すみませんすみませんと半ば土下座に近い店主の謝罪に呆れ、キラーが縁がなかったのさ、と軽くもう行こうと促す。せっかく戻ったというのにむだ足だった事に腹が立ち、近くの椅子を蹴り飛ばした。そして怒りの矛先は別の場所に向けられる。この俺から玩具を奪った糞野郎を殺して奪ってしまおう。とにかくキッドはこの島に来てからつまらない事だらけでイライラしていたのだ。
「…で、買った奴の名は?どこの奴だ?」
「キッド…何もガキ一人にそこまでする必要ないだろう」
「うるせぇな…イライラしてんだよ、暇潰しくらいさせろ」
そしてまだ何か挙動不審な店主から買い手のリストを強引に奪い取る。ケースナンバーは02。姫。買い手…
―ドゴォォオン!!!
店の入口からは土煙に何がどう飛び散ったのか分からないような破片や鉄屑。表通りは突然何が起こったのか分からず、ただ逃げ回る。
「キッド!やり過ぎだ!場所を考えろ!」
キラーが諫めるのも余り耳に届かず、目にしたリストに怒りをあらわにする。そして特徴的な笑みを浮かべ、リストをキラーへ投げる。
「キラー、見たか?…どうも殺しても殺し足りねぇ気がしてきたぜ」
「……………偶然、だろう?」
「関係ねぇな。俺の目ぇつけたもん横取りするような奴は生かしちゃおかねぇ。相手がそいつなら尚更な………
……なぁ、トラファルガーッ」
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