始まりは何気ない昼下がり(ロー目線)
さっき寄った酒場で面白い話を聞いた。何やら冥王レイリーがヒューマンショップで売られているだの何だの。真偽は掴めてはいないが、もしそうなら利しかない。あのレイリーだ。もしもこの話が本当ならば従わせる事まで出来なくとも、何か役に立つ情報の一つや二つ聞かせてくれんじゃないだろうか。そんな軽いノリで4、5人クルーを引き連れヒューマンショップを訪れた。
「いらっしゃ…」
俺達が店に入るなり顔を向けた主だが、なんだが魂を抜かれたように呆然と立ち尽くしていた。あまり気にせず店内を見て回る。正直に言うとレイリーにあった事は疎か顔を新聞か何かで少し見た程度で、こいつがレイリーだ、なんて言い切れる確証もないままではあった。なのでもし見つかるのならば…と半分宝探しのような感覚でいた。
「これ海王類かな?」
「いやいや、こんな生き物見たことねぇよ」
そんな中、ベポとシャチの妙な会話が聞こえ見れば端のケース内を覗いている。海王類がヒューマンショップで売れる訳ねぇだろ。まずこんなケースに入らねぇよ。と近づき覗いて見れば乱雑に紙の山が出来たケース内。ベポとシャチが言ってたのは一番手前にある紙に描かれた不可思議な生き物の絵であった。
「………」
しかしそれよりもこの汚ぇケースの、紙の山の中でゴソリと動いたそれに目がいった。
こんな場所でよく眠れるなと思いながらガサゴソと寝返りを打つガキ。少しだけ見えた顔は特に面白みはないが白い肌に黒髪がよく映えているなと、どうでもいい事を考えていた。
「紙で切っちゃったのかなぁ?」
あれ…とベポが指さすのは微かに見える頬。確かに綺麗に一直線に引かれた赤が見える。そりゃそうだろ、こんな紙切れの中にいちゃあどう頑張っても切り傷くらいつくだろう。見れば腕や顎、至る所に切った痕跡が見える。治りかけも含めればもっとだ。
「………コイツにする…」
「ぇ!!?」
そういえばここの主は気に入った奴がいれば持っていけと言ってた。気に入った…訳ではない。むしろ気に入る要素があるなら教えて欲しいくらいだが。
「ど、どうするのキャプテン!?」
何やら心配そうに尋ねてくるベポに、別に…と笑って軽く返せば余計に心配そうにワタワタしている。
そして面白そうなものを見つけたローは、冥王レイリー探しを呆気なく終了した。
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