始まりは何気ない昼下がり(キッド目線)
特に面白くもないシャボンディ諸島に正直イライラし始めていた。どちらかと言えば派手に、何か仕出かすような事でもあった方がよっぽど面白い。
しかしここはシャボンディ諸島。下手に騒ぎ立てでもすれば海軍が大将引き連れてご到着するようだ。流石にそんな不利を見込んで馬鹿をするほど俺もガキじゃねぇ。
「キッド、あったぞ」
声の方向にはまたこじんまりしたヒューマンショップ。同行していた仮面の男。キラーも、ここも寄るのか?と多少呆れたようにため息をつく。酒場には浸るほどいた。だが何も楽しめそうな物も人物も都合よく現れるはずもなく、今こうして二人は面白い代物でもないかとヒューマンショップを練り歩いていたのだ。もう全店制覇するんじゃねぇのかっつーほど寄ってはいるが、なかなか興味が沸くようなヤツに出会わない。
「いらっしゃいませ、ユースタス様」
店の主には構いもせず、何か自分の玩具になりそうなヤツはいないかとケースを覗く。
巨人なんか船に乗せるのは面倒くせぇ、女は…きっとケースを出たい一心なんだろうが、こちらを誘うように胸元や舌を覗かせ媚びを売る様が不愉快極まりねぇ。かと言って中途半端な同業者を乗せるのも気分がいいもんじゃねぇ。
結局のところ楽しめればそれでいいが、面倒な事はしたくはなかった。
最後のケースには紙が散らばり、中はカラ…のように見えた。じっと見れば微かな紙の隙間から覗く黒髪と小さい手。死んでんのかと思ったが時折指先がピクリと跳ねる。
紙、としか認識していなかったそれらは、どうやら絵のようだった。だがどれも与えられた黒いペンのみで思い出しながらか、空想のものか定かではない山や花、奇妙奇天烈な生き物や、中には同じヒューマンショップ内の捕まってるヤツの顔なんかもある。
(画家…にしちゃあ下手くそだな)
少しだけ口を吊り上げ笑えば、傍らにいたキラーからホイホイ買って困るのはお前だぞ?と釘を刺される。うるせぇな。
あとヒューマンショップはいくつあるだろうか。全て回ってそれでも役に立ちそうな奴がいなければ、またここに戻ろうと思った。
あんなガキならいようがいまいが同じだ。殺そうが生かそうが簡単だしな。そう考え店を後にした。
あの下手くそな絵の中で眠るガキを考えて。
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