挙動不審
「船長、さん……?」
姫に名前を呼ばれ、我に帰る。しかしそれ以上どうする事も、言うことも見付からず、何でもないと言い食堂を出た。
「…(船長さん…どうしたんだろう)…」
「シャチ…無事だった!?」
「おま…ベポ、助けろよー。あんな空気お前くらいしか打破出来ないんだからさー」
(しっかし…あんな船長、珍しい)
姫は船長が何かしら気に入ってヒューマンショップから連れ出したに違いない。まぁ姫の見た目からして性的な対象ではないとは思うが、手を出そうもんなら殺意漲らせてバラしにかかるかと覚悟してたのに、船長は殺意どころか、どこか言葉を失い、唖然としていたのだから調子を崩されたのはこっちだ。
「キャプテン…なんかいつもと違ってなかった?」
「あー、やっぱそう見えたよな?」
「なっ、何か…私が気に障るような態度、とっちゃいましたか!?」
態度っつーかなんつーか、まぁさっきのハグは見事に忘れちゃってる姫はワタワタと何か怒らせたんじゃないかと不安そうだ。姫は何もしてないから大丈夫、問題ないって。と俺が言えばホッと息を吐いた。しかし…船長にあんな顔させる姫って一体何者なんだと一瞬不思議に思った。まぁバラされなかったからいいや、俺は。
何してんだ俺は…。食堂から自室へと戻り、先程の自分の行動に嫌悪感すら覚えた。姫がシャチに抱き着いていた…いや、シャチが無理矢理姫に抱き着いていた、か?いやどっちだっていいはずだ。あの様子だと男と女っつー訳でもなかった。ただ仲良くじゃれてたに近かっただろ。少し考えればガキに欲情したのかと馬鹿にしてクルーに言い触らすくらいの悪ふざけも出来た。……なのに俺のとった行動は、抱き着いている二人を引き離し、退場。
………何がしたいんだ…俺。
考えれば考えるほど泥沼にハマるような感覚が襲い、頭も痛いし気分も悪くなってきた気もする…。もう考える事をやめてしまえ、と半ば強制的に眠りについた。
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