お約束な展開

俺が手招きすれば、姫はニッと笑い駆け寄ってきた。ほぼ雑用として船には乗っているので、姫にしてみれば、いつも何か動いて仕事をしていないと落ち着かないのか洗濯物だって一心不乱に干していたが、呼ばれれば嬉しそうに寄ってくる。まるで小型犬。

姫が船に乗ってから、野郎だらけのむさ苦しい船上生活に少しばかり鮮やかさが増した。最初こそビクビクして顔だって強張ってたけど、特に俺らが害はないと分かると懐くのは早かった。ホント可愛い。

「なんですか!シャチさん!」

「あれ、元気じゃん!いやさー今こっから姫見てたら顔すんげー怖かったから何かあったのかなーって。ベポが」

もし聞かれたくない事聞いてしまって、また壁を作られたらちょっとショックだし、笑って接してくれなくなったりされるのは嫌だったし、中途半端な防衛本能が働き、ベポがと付け加えてみる。

「あ…えと………」

「あ…どうしたの姫?やっぱり何か嫌な事でもあった??」

おれで良かったら相談のろうか?とベポ。いやいや流石に白クマ相手にマジ相談しても意味なくねーかと考えていたら、姫は呆気なく実は…と話を切り出した。ベポお前すげぇわ、やっぱ得だよな、うん。

「嫌いとか、じゃないんですけど…その、船長さんが、ちょっと、苦手?と言うか…ムカムカ?する、と言うか…」

「ぶふっ!!」

「シャチ…汚いよ」

すんごい眉間に力込めながら姫は船長にムカムカするとか言い出したから、軽い気持ちで相談を聞くように飲み物を口にして聞いていた矢先、姫からの船長にムカムカ発言に驚いて飲んでたものを吹き出した。

「なんでキャプテンにムカムカ?」

「なんっ、え…船長に何か腹立つ事でもされたわけ!?」

「…?いえ!決してそんな事は!あれ?何か言い方、おかしかったですか??」

いや俺に聞かれても…と言えばムカムカ…とかモヤモヤ…とかブツブツ言い出した。つうか全体的に解決もしてないし、理由もイマイチ把握仕切れてない俺に姫はどうしたらいいかと解決策を尋ねてくる。いや、だからさ無茶ぶりすぎ………つかそんな困った顔して見つめんなよ!眉とか下がっちゃって悲しそうな目がすんげーギュウッとしたくなるっ。

「んじゃさ、姫…気分が楽になるようにギュウってしてやろっか?」

「もー、シャチ…キャプテンに怒られるよ」

「んだよベポー。いいじゃんチクんなきゃバレないんだし…な!姫!」

「え、え…えー………え?」

ハグなんて挨拶じゃん。ムカムカもなくなるかもよ?と説得と言う名の若干強制。まぁそこはな、入ったばっかだし姫が断りにくいっつーのを狙ったっつーか。あれ、俺なんだか最低じゃね?

「はい、俺の胸に飛び込んで来なさい」

絶対ペンギンなんかに聞かれたらドン引かれるような事言い、手を広げれば、意外にもすんなり…

(……………うーわ)

姫はじりじりと恥ずかしげに近付き顔を赤らめながら腕の中に入ってくれた。

…瞬間







―…ギィ




[ 18/22 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]



人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -