また別の意味での距離感

あの絵を描く理由を聞かれた一件から何だか更に船長さんを遠ざけるようになってしまっている。無意識…だと思いたかった。船長、そして恩人でもある人に対して失礼極まりない。…しかしどうも意識的にやってしまっている事に自分でも気付いている。初めは苦手意識が100%だった。なのに今はどうだ。苦手意識はもちろんあるが、それと同時に、何か別の………なんて言うのだろうか。こう…ギュウッとなる………何とも言い表せないモノが、喉の奥に引っかかっているようでモヤモヤする。



―――同じだな、姫



2日は経っているのに、少しでも気を抜けば、思い出すのは船長さんのあの言葉・瞳・笑みなのだ。自分でも何故そうも気にしているのか分からず、また気にしてしまう理由が何なのか考えれば考えるほど頭が痛くなる。

「…………っ…」

バサバサと風の強い甲板に洗い物を干しながらウーンと唸るように考え込む姫。そんな姫に一番に気付いたのは、意外にもベポだった。食堂でシャチと食事をしつつ…ちょこまかと甲板で洗濯物を干しながら動く姫をぼーっとベポは見ていた。

「…姫…気分でも悪いのかなぁ?」

「へ…なんで?」

シャチもベポの言葉を受け甲板に目をやる。姫は動きが鈍い訳ではないが、顔は眉間にシワを寄せ、口元はヘの字に結んでいる。悩んでいる、困っている、苦しんでいる、怒っている…こちらから見る限り姫の表情は全て良いものを示すとは到底思えない。

「何か嫌な事でもあったのかな?」

「んー、なら直接聞いた方が早くね?………姫ー!」

シャチがおーいと呼ぶと少し間をおいてだったが、こちらに気付いて、いつもの幼く見えるニッとした笑顔でこちらに足早に駆けてきた。




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