お仕事しましょう

「おはよー姫!よく眠れた!?」

バタン!と勢いよく開かれた扉に驚き急かされながら夢の中から引っ張り出された。ベポくんにはプライバシーとかマナーとかないんだろうかと眠い目を擦りながら見れば、どうかした?と首を傾けこちらを見返す。もう可愛いから常識云々なんてどうでも良くなったりする。

「おはようございます…」

「起きてすぐで悪いんだけど、キャプテンから皆の手伝いするようにって言われたから、着替えたら食堂に来てね!」

お仕事だ!この潜水艦に乗ったばかりだが、結局今のところ何もしてないし、役に立つどころか部屋やら宴やら、もらうばかりで何も返せてないので申し訳なく思っていた。

「はい!すぐ!行きますね!」

「うん、でも気をつけてね?」

姫がドタバタとベッドから飛び上がれば足がもつれ転びかけ、洋服の箱を開れば手を挟みかけ、それを見たベポはゆっくりでいいよと心配そうに言い残し部屋を出ていった。

ドキドキしながらも初仕事に急ぎ食堂に向かえば、そこにはベポくんにコックさんがテーブルに座り雑談中。先に私に気付いたコックさんが、ちょいちょいとこちらにくるように指を動かした。

「あ、姫早かったね!」

「はい!急いできました!」

お手伝いはなんですか!?と身を乗り出し気味に尋ねれば、なんてことない皿洗いだった。いや、皿洗いも立派なお手伝いなのは分かるが、こんな簡単な事で良いのだろうかと逆に申し訳なかった…。

「シンク周りを片付けたら終わりですか?」

「おぅ、いや悪いなー姫ちゃん。野郎に片付け頼んでも結局汚ぇままで終わっちまうんだよ」

だから頼むな!とコックさん。そしてコックさんとベポくんはというと、お昼ご飯の準備と甲板の掃除があるといい、食堂を出ていってしまった。

私一人になった食堂にはカチャカチャとお皿が当たる音と水の流れる音だけになった。話し相手も気を遣う相手もいないので、黙々と皿洗いに勤しむ。それ程多くもなかったシンクの汚れ物も、残りわずかになり鼻歌まじりに作業をこなしていれば…

「終わりそうか?」

「っひぇ!!……………ぁ」

突如背後から声がかかり、驚いた拍子に持っていた洗いかけの皿を落として割ってしまった。

「…すみません、割っちゃいました………というか、いつ入って来たんですか、ペンギンさん…」

気配が全く無かったんですがといえば、鼻歌歌ってるから気付かなかったんじゃないか?と言われた。あぁ…下手くそな鼻歌なんか聞かれてしまったと少し鼻歌を歌った事に後悔した。



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