お酒と新事実

「おいてめぇらそれ以上苛つく声出してっと宴はお開きだ」

ピタッと静まる食堂、もとい海賊さん達。さすが船長さん、統率力が素晴らしい。そしてまた少しずつ先程の賑やかなムードに変わっていく。歓迎会なんて名目にすぎないのは分かってはいても嬉しい。海賊のはずなのに、よろしくなー!とかこれ美味いぞ!と気軽に話かけてくれる。雑用にこんなにも優しい海賊がいるだろうか。いや、海賊でなくとも雑用、とつけばおのずと下に見る人の方が多いはずだ。

「姫ー!考え事か!?そんなん後にしといてまず飲めって!」

「あ、はい」

そういうとお酒がなみなみと注がれたグラスを目の前に差し出されたが、隣にいたローさんが

「シャチ、ガキに酒はやめろ」

あ、そうか、ジュースとかのがいいっすかね!と船長さんに言われシャチさんはジュースを注ぐ。ジュースも好きだけど…船長さんの言葉に引っ掛かる。

「あの…どうでもいいと思うんですが、私、お酒飲めます、よ」

「お、意外」

と笑ってシャチさんが言ったが、だって23ですもんと私がそう続けると固まってしまった。ジュースがグラスを超えてもなお注ぐシャチさん。前から分かってはいたが、こうも見本の如く反応を返されるとは…。

「…………23?」

「はい、23歳です」

姫とシャチの会話を横で聞いていた俺は、正直嘘だろうと思った。どう見ても15、6のガキにしか見えない。体も…まぁ15、6ってとこだし…。年は聞いてなかったがガキだと判断してしまったのは黒々したツヤのある髪に童顔…あときっとあの下手くそな海王類もどきな絵を見たせいだろう。

「あー…若く見えんなー姫!じゃ、酒で乾杯し直すか!」

「あ、いえ…大丈夫です!催促してしまったみたいで…申し訳ないです」

ガキ発言に気を悪くしたかと思ったが、酒が飲めるからか、自分も会話の輪の中にいるからか嬉しげに目をパチパチしてジュースを口に運ぶのがよく見えた。……あとシャチがやたら姫との距離を縮めたのも。

「………………………シャチ」

「はいぃ!さーみんな飲むぞー!」

低く怒気を含み、変な気を起こすなと言わんばかりに名前を呼べば、飛び上がって姫から離れた。当の本人、姫はそれに気付かずどうかしたのかとハテナを浮かべていた。




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